解答 行政書士試験 平成18年16問
行政法 行政不服審査法
○:5.取消訴訟においては処分の適法性のみを争うことができるが、行政不服申立てにおいては処分の適法性のみならず、処分の不当性をも争うことができる。
○:5.取消訴訟においては処分の適法性のみを争うことができるが、行政不服申立てにおいては処分の適法性のみならず、処分の不当性をも争うことができる。
問16
行政不服審査手続と取消訴訟手続の対比に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.取消訴訟は他の民事訴訟と同じく3審制であるが、行政不服申立ての場合、異議申立てに対する決定に不服があるものは、第三者機関に審査請求できる2審制が原則として取られている。
☓:2.行政不服審査法4条により、不服申立ての対象とならないと定められている外国人の出入国に関する処分、刑務所の被収容者に関する処分については、取消訴訟でも争うことはできない。
☓:3.取消訴訟の出訴期間は、処分の相手方が処分のあったことを知った日から6か月であるが、不服申立て期間は3か月となっている。
☓:4.取消訴訟においては行政処分のみを争うことができるが、行政不服申立てにおいては、行政指導や事実行為も争うことができる。
○:5.取消訴訟においては処分の適法性のみを争うことができるが、行政不服申立てにおいては処分の適法性のみならず、処分の不当性をも争うことができる。
解説
1.誤り。
取消訴訟は、民事訴訟同様に、原則的に「地方裁判所→高等裁判所→最高裁判所」と三度の審理が認められる三審制である(行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第281条、311条)。
これに対して、行政不服審査法は審査請求中心主義を採用しており、異議申立てと審査請求は別個独立の制度であって「異議申立→審査請求」という審級制度をとっている訳ではない。
2.誤り。
行政不服審査法第4条では、対象除外の規定を設けており、本肢にある「外国人の出入国に関する処分」、「刑務所の被収容者に関する処分」はその例であるが、取消訴訟では対象除外の規定を設けておらず、本肢の例を含め処分性の要件を満たせば(行政事件訴訟法第3条2項)、訴えを提起し争うことができる。
3.誤り。
出訴期間は原則として処分のあったことを知った日から6か月(行政事件訴訟法第14条1項)であるが、不服申立ては、原則として処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならない(行政不服審査法第14条1項、45条)。
4.誤り。
処分の取消訴訟における「処分」には、行政庁の処分の他に「その他公権力の行使に当たる行為」が含まれる(行政事件訴訟法第3条2項)。
また、行政指導はあくまでも任意の協力によってなされるもので、法的拘束力はないことから法律上認められる処分に該当せず、原則として行政不服審査法における不服申立ての対象にならない(行政不服審査法第2条1項)。
なお、公権力の行使に当たらない単なる事実行為は、取消訴訟の対象にならないが、行政不服審査法2条1項で定義している事実行為自体は(公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもの)、取消訴訟の対象となる。
5.正しい。
行政事件訴訟は、司法機関たる裁判所が行うものなので、審査の対象は「適法性(違法性)」、すなわち、違法にまで至らない不当な処分等については、争うことはできないが、行政不服審査法は、行政権自身が行う不服申立てであり、その目的には行政内部の自己統制も含まれているため、審査の対象に「不当性」も含まれており、不当も争うことができる(行政不服審査法第1条1項)。
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