解答 行政書士試験 平成18年17問
行政法 行政事件訴訟法
○:1.個別法が裁決主義を採用している場合においては、元の処分に対する取消訴訟は提起できず、裁決取消訴訟のみが提起でき、元の処分の違法についても、そこで主張すべきこととなる。
○:1.個別法が裁決主義を採用している場合においては、元の処分に対する取消訴訟は提起できず、裁決取消訴訟のみが提起でき、元の処分の違法についても、そこで主張すべきこととなる。
問17
取消訴訟と審査請求の関係についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
○:1.個別法が裁決主義を採用している場合においては、元の処分に対する取消訴訟は提起できず、裁決取消訴訟のみが提起でき、元の処分の違法についても、そこで主張すべきこととなる。
☓:2.行政事件訴訟法は原処分主義を採用しているため、審査請求に対する棄却裁決を受けた場合には、元の処分に対して取消訴訟を提起して争うべきこととなり、裁決に対して取消訴訟を提起することは許されない。
☓:3.審査請求ができる処分については、それについての裁決を経ることなく取消訴訟を提起することはできないとするのが行政事件訴訟法上の原則であるが、審査請求から3か月を経過しても裁決がなされないときは、裁決を経ることなく取消訴訟を提起できる。
☓:4.審査請求の前置が処分取消訴訟の要件とされている場合には、その審査請求は適法なものでなければならないが、審査庁が誤って不適法として却下したときは、却下裁決に対する取消訴訟を提起すべきこととなる。
☓:5.審査請求の前置が処分取消訴訟の要件とされている場合には、その出訴期間も審査請求の裁決の時点を基準として判断されることとなるが、それ以外の場合に審査請求をしても、処分取消訴訟の出訴期間は処分の時点を基準として判断されることとなる。
解説
1.正しい。
取消訴訟においては、原則として原処分主義を採用しており、処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消の訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができず、裁決の手続上の違法やその他裁決固有の違法のみしか主張することができない(行政事件訴訟法第10条2項)。
一方、個別法で裁決主義を採っているときは、裁決取消訴訟のみが提起でき、元の処分についても裁決取消訴訟で争うことになる。
なお、個別法で裁決主義を採っている例としては、土地改良法、海難審判法、特許法などがある。
2.誤り。
原処分主義を採用しているからといって、裁決の取消訴訟の提起が許されなくなるわけではないため、裁決に対して取消訴訟を提起することは許される。
この点、裁決の手続上の違法やその他裁決固有の違法は、処分の取消訴訟で争うことはできないと解されているため、これらの違法を主張したい場合は、裁決の取消訴訟を提起し、そこで争う他ないことになる。
3.誤り。
行政事件訴訟は、自由選択主義を採用しており、原則として処分について不服がある場合に、審査請求をするか、審査請求を経ずに行政事件訴訟を提起するか、両者を同時にするかは、当事者の自由な選択に委ねられており、不服審査前置主義は、法律に定めがある場合にのみ認められる例外的なものである(行政事件訴訟法第8条1項)。
なお、本肢後半の「審査請求から3か月を経過しても裁決がなされないときは、裁決を経ることなく取消訴訟を提起できる。」という点は、審査請求前置主義の場合も、自由選択主義により審査請求した場合も、妥当する(行政事件訴訟法第8条2項1号)。
4.誤り。
審査庁が誤って不適法に却下裁決をしたときは、審査請求前置の裁決を経たことになり、直ちに訴訟を提起できる。
「本訴の上告人の請求は更正処分の取消であるから同法五一条により原則として再調査決定、審査決定を経なければ提起できないのであるが、国税庁長官又は国税局長が誤ってこれを不適法として却下した場合には本来行政庁は処分について再審理の機会が与えられていたのであるから、却下の決定であってもこれを前記規定にいう審査の決定にあたると解すべき」(最判昭和36年7月21日)。
なお、本肢前半の「審査請求の前置が処分取消訴訟の要件とされている場合には、その審査請求は適法なものでなければならない」という点は正しい(最判昭和30年1月28日)。
5.誤り。
審査請求前置主義を採っている場合でも、自由選択主義により審査請求した場合でも、審査請求の裁決がされていれば、処分取消訴訟の出訴期間は、裁決を基準として出訴期間を算定する(行政事件訴訟法第14条3項)。
なお、行政不服審査法の不服申立ては、簡易迅速を目的に掲げているが(行政不服審査法第1条)、実際には、裁決されるまでに長期間かかることも少なくなく、裁決を基準として出訴期間を算定しなければ、不当に出訴機会を奪うことになりかねないため、このように規定されている。
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