解答 行政書士試験 平成18年31問
民法債権
○:1.一つ
○:1.一つ
問31 A・B間で建物の売買契約が成立し、Aは、Bから建物の引渡しを受け、また、移転登記も得て、近く同建物に引っ越しをしようと思っていたところ、同建物は、第三者Cの放火によって焼失してしまった。この場合に関する次のア~オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア、BからAに対して上記建物についての売買代金の支払請求があった場合に、Aは、Bに対して同時履行の抗弁権を主張して代金の支払いを拒むことができる。
イ、上記建物は、Bの責めに帰すことができない事由により焼失したので、危険負担に関し建物の滅失についてはAの負担に帰する。
ウ、Aは、Bに対して履行不能を理由として売買契約を解除することができる。
エ、Aは、Bに対して代金の支払いを免れることはできないが、債務不履行を理由とする損害賠償請求をすることができるので、この両者につき相殺を主張することができる。
オ、Aは、Bに対して代金の支払いを免れることはできないが、Cに対して不法行為を理由として損害賠償請求をすることができる。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
○:1.一つ
☓:2.二つ
☓:3.三つ
☓:4.四つ
☓:5.五つ
解説
ア.誤り。
売主Bは、すでに建物の引渡し、所有権移転登記という債務を履行しているため、買主Aは同時履行の抗弁権を主張して代金の支払いを拒むことができない(民法第533条)。
イ.誤り。
本問では、Bはすでに履行を完了させているため、結論として、Aは代金の支払いを拒むことはできないが、本肢では、「危険負担に関し」と問うているため、Aが建物代金を負担する理由は、危険負担における債権者主義(民法第534条1項)によるものなのかの判断が必要となる。
この点、危険負担における債権者主義は、契約成立から履行完了までの間において、誰に危険を負担させるべきかを規定したものであって、本問では、売主Bがすでに建物の引渡し、所有権移転登記という債務の履行が完了しているため、危険負担の問題が生じる余地はないということになる。 したがって、「危険負担に関し・・・Aの負担に帰する。」としている点は、誤りである。
ウ.誤り。
売主Bは、すでに建物の引渡し、所有権移転登記という債務を履行しており、債務不履行(履行不能)にはあたらないため(民法第415条)、契約の解除はできない(同法第543条)。
エ.誤り。
売主Bは、すでに建物の引渡し、所有権移転登記という債務を履行しているため、債務不履行(不完全履行)にはあたらない(民法第415条)。
したがって、Aは損害賠償請求権を有さず、相殺の主張も認められない(民法第505条1項)。
オ.正しい。
Bはすでに履行を完了させているため、Aは代金の支払いを拒むことはできない。
他方、建物の所有者たるAは、第三者Cの放火という不法行為により損害を被っているので、Cに対して損害賠償請求できる(民法第709条)。
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