行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成18年55問

一般知識

○:3.通信にかかる個人の秘密は個人情報保護法によっても保護されるが、通信にかかる法人の秘密は、通信の秘密の法理により保護される。


問55

「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」(いわゆる行政手続オンライン化法)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1,個人情報保護法が私人に対しても適用されるのに比べ、通信の秘密の法理は、公権力による通信の侵害にのみ適用され、私人による通信の秘密の侵害には適用されない。

☓:2.通信の秘密を保護する義務は、回線を保有管理する電気通信事業者には課せられるが、回線を利用するに過ぎない電気通信事業者(プロバイダ)は、個人情報保護法の適用は受けても、通信の秘密を保護する義務は負わない。

○:3.通信にかかる個人の秘密は個人情報保護法によっても保護されるが、通信にかかる法人の秘密は、通信の秘密の法理により保護される。

☓:4.個人の秘密に関する情報の漏洩は個人情報保護法により刑事罰の対象となるが、通信の秘密を侵害しただけでは刑事罰の対象とはならない。

☓:5.受信者が個人情報保護法に基づき匿名通信の発信者情報の開示を求めた場合には、発信者の通信にかかる通信の秘密は保護されない。

解説

1.妥当でない。
憲法上の通信の秘密については、直接にしろ、間接にしろ、その効力は及ぶため、私人による通信の秘密の侵害に「適用されない」とは言えない。
また、ここでいう「通信の秘密の法理」を憲法21条2項後段に限定せず、法の原則として広くとらえるならば、電気通信事業法第4条1項にて「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。 」と規定されているため、私人にも適用される。
2.妥当でない。
電気通信事業法第4条1項では「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。 」と規定されているため、通信の秘密を保護する義務は電気通信事業者にもある。
3.妥当である。
個人情報保護法における個人情報とは、自然人であり法人はその保護対象になってないのに対し、通信の秘密の法理による保護は、自然人(個人)・法人の区別なく適用があるため、自然人だけでなく法人も保護対象となる。
したがって、通信にかかる個人の秘密は個人情報保護法によっても保護されるが、通信にかかる法人の秘密は、通信の秘密の法理により保護される。
4.妥当でない。
個人情報保護法では、個人の秘密に関する情報の漏洩をしたからといって、即座に刑事罰の対象になるわけではなく、主務大臣の勧告・命令を経てそれに従わない場合に初めて刑事罰の対象になるにすぎない(個人情報保護法第34条、56条)。
また、電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密を侵した者には、2年以下の懲役又は百万円以下の罰金という刑事罰の対象となる(電気通信事業法第179条)。
5.妥当でない。
個人情報保護法に基づく開示請求(個人情報保護法第25条1項)は、本人の個人情報について認められるものである。
また、他の法令に違反する場合等の不開示事由があれば開示請求を拒む事ができるため、発信者の通信にかかる通信の秘密は保護される。


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