解答 行政書士試験 平成19年17問
行政事件訴訟法
○:3.Xが市立保育園に長女Aの入園を申込んだところ拒否された場合において、Xが入園承諾の義務付け訴訟を提起する場合には、同時に拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して提起しなければならない。
○:3.Xが市立保育園に長女Aの入園を申込んだところ拒否された場合において、Xが入園承諾の義務付け訴訟を提起する場合には、同時に拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して提起しなければならない。
問17
行政事件訴訟法上の訴訟類型の選択に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.Xの家の隣地にある建築物が建築基準法に違反した危険なものであるにもかかわらず、建築基準法上の規制権限の発動がなされない場合、Xは、当該規制権限の不行使につき、不作為違法確認訴訟を提起することができる。
☓:2.Xらの近隣に地方公共団体がごみ焼却場の建設工事を行っている場合、建設工事は処分であるから、Xらは、その取消訴訟と併合して、差止め訴訟を提起し、当該地方公共団体に対して建設工事の中止を求めることができる。
○:3.Xが市立保育園に長女Aの入園を申込んだところ拒否された場合において、Xが入園承諾の義務付け訴訟を提起する場合には、同時に拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して提起しなければならない。
☓:4.Xが行った営業許可申請に対してなされた不許可処分について、同処分に対する取消訴訟の出訴期間が過ぎた後においてなお救済を求めようとする場合には、Xは、公法上の当事者訴訟として、当該処分の無効の確認訴訟を提起することができる。
☓:5.X所有の土地について違法な農地買収処分がなされ、それによって損害が生じた場合、Xが国家賠償請求訴訟を提起して勝訴するためには、あらかじめ、当該買収処分の取消訴訟または無効確認訴訟を提起して請求認容判決を得なければならない。
解説
1.誤り。
不作為違法確認訴訟は、行政庁が法令に基づく申請に対し、処分等をしない場合に、申請をした者に限り提起するものであって(行政事件訴訟法第3条5項、同法第37条)、行政庁の不作為全般をその対象にしているわけではない。
したがって、Xは、隣地建築物に関して何ら申請をしていないため、不作為違法確認訴訟を提起することはできない。
なお、本肢の場合、Xは義務付け訴訟の提起を検討することができる(同法第3条6項1号)。
2.誤り。
地方公共団体が建設工事を行うことは、非権力的な事実行為であり、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法第3条2項)とはいえず、取消訴訟及び差止訴訟を提起することができない。
「(ごみ焼却場設置行為は、)都が公権力の行使により直接上告人らの権利義務を形成し、またはその範囲を確定することを法律上認められている場合に該当するものということを得ず・・・中略・・・「行政庁の処分」にあたらないからその無効確認を求める上告人らの本訴請求を不適法であるとしたことは、結局正当である。」(最判昭和39年10月29日)
なお、本肢の場合、Xらは、民事訴訟の手続によって、身体的・精神的被害、生活妨害等の損害を被ることを理由に、人格権又は環境権に基づく妨害排除又は妨害予防として、差止請求をすることは可能である。
3.正しい。
義務付けの訴えは、大きく分けて非申請型と申請型が有り、本肢のような申請型(処分拒否型)においては、取消訴訟又は無効等確認の訴えを併合提起することを要する(以下参照)。
義務付けの訴えの類型
類型要件対応訴訟
非申請型
行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき義務付けの訴えを単独で提起
申請型不作為型申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないとき義務付けの訴えと不作為の違法確認の訴えを併合提起
処分拒否型申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされ、それが取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であるとき義務付けの訴えと取消訴訟又は無効等確認の訴えを併合提起
4.誤り。
無効な行政行為については、公定力や不可争力は働かず、期間の制限は受けないため、それに対応する処分の無効の確認訴訟でも、出訴期間を制限する規定を置いておらず、取消訴訟の出訴期間が過ぎた後においても提起することができる。
しかし、行政事件訴訟法において、処分の無効の確認訴訟は、抗告訴訟であり、公法上の当事者訴訟とは、別物である(行政事件訴訟法第3条4項)。
したがって、「公法上の当事者訴訟として、当該処分の無効の確認訴訟を提起すること」はできない。
5.誤り。
「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではない」(最判昭和36年4月21日)
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