行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成19年2問

基礎法学

○:4.A悪法 B権利 C自白 D法  E契約


問2 法格言に関する次のア~オの記述のうち、[A]~[E]に当てはまる語句として、最も適切な組合せはどれか。

ア、法実証主義の考え方によれば、「[A]もまた法である。」が、自然法思想によれば、「[A]は法ではない。」ことになる。
イ、時効の制度は、「[B]の上に眠る者は、保護されない。」という法格言から説明することもできる。
ウ、「[C]は証拠の女王である。」という法格言があるが、刑事訴訟において、[C]が被告人に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とすることはできない。
エ、「事実の不知は許されるが、[D]の不知は許されない。」という法格言があるが、責任主義の観点から、この法格言がそのまま通用する訳ではない。
オ、「[E]は遵守されなければならない。」という法格言は、[E]の拘束力の根拠とされることがある。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.A道徳 B法  C物証 D倫理  E法

☓:2.A悪法 B権利 C自白 D常識 E慣習

☓:3.A道徳 B権利 C物証 D倫理 E契約

○:4.A悪法 B権利 C自白 D法  E契約

☓:5.A倫理 B法  C証言 D法   E慣習

解説

A.「悪法」が入る。
「悪法も法である」とは、人々は法に従うことによってその秩序が保たれているため、たとえ悪法であっても、正式な手続きによって定められた法には、従うべきであるという意味である。
法実証主義では、法学を論理的・形式的に秩序づけ、正義や善といった価値から法を切り離すため「悪法も法である」となり、法実証主義を表す法格言とされている。
一方、自然法思想によれば、人々を規制している個別具体的な法律である実定法を越えた法として、普遍的人間を認める自然法があると考えるため、「悪法は法ではない」となる。
なお、「悪法も法である」という法格言のもとは、ソクラテスが言った言葉で、ソクラテスの思想が、若者を堕落させたとして死刑判決を下されたため、弟子がソクラテスのために逃亡の準備をした際に、ソクラテスが弟子に対しこの言葉を残し、その後、服毒自殺をしたとされている。
B.「権利」が入る。
「権利の上に眠る者は、保護されない。」とは、 権利の行使は、その実現しようと努力した者に限るべきであり、たとえ正当な権利を有していても、その権利を主張し実現しようとしなければ、保護されないという意味であり、表面的には時効制度を表す法格言ではあるが、民事訴訟における処分権主義にも関連するものである。
なお、処分権主義とは、訴訟手続の開始、審判範囲の特定、訴訟手続の終了については、当事者の自律的な判断に委ねられるという原則である。
C.「自白」が入る。
「自白は証拠の女王である。」とは、 自白は最も強い証拠であるという意味で、かつては重視されたものではあるが、自白偏重によることで自白を得るための拷問などがなされるようになり、冤罪の温床となったため、近代司法においてはその反省を踏まえ修正が図られている。
我が国では、いわゆる自白法則により、唯一の証拠が自白である場合は、有罪とすることはできないとしており、また、強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白、任意性のない自白は証拠とすることができない(憲法第38条、刑事訴訟法第319条)として、その修正が図られている。
なお、民事裁判における事実認定・証拠評価については、いわゆる自由心証主義により裁判官の自由な判断に委ねられている。
D.「法」が入る。
「事実の不知は許されるが、法の不知は許されない。」(単に「法の不知はこれを許さず。」とも言われる。 )を表す規定として、刑法38条3項では「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」としている。
もっとも、行為者に対する責任非難ができない場合には刑罰を科すべきではないとする原則により(責任主義)、同条1項では「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。」としており、この法格言がそのままあてはまる訳ではない。
E.「契約」が入る。
「契約は遵守されなければならない。」という法格言は、古代ローマ法上の法格言で、法分野、特に契約法(民法)の根本理念の一つであり、契約が個人の自由な選択・意思により締結されたならば、その契約は守らなければならないということである。
他方、契約の拘束力とは、契約が有効に成立すると、契約当事者はその契約内容に拘束されることをいう。
両者は、表裏の関係にあり、すなわち、契約内容を守る必要がなければ、拘束は受けないし、逆に契約内容を守る必要があるならば、その拘束を受けることになる。
そのため、当該格言は、契約の拘束力の根拠として説明されることがある。


この問題の成績

  • まだ、データがありません。


  • 試験過去問題の使い方

    平成30年までの行政書士試験問題の過去問を掲載しています。

    問題の解答ボタンの順番が、毎回ランダムで移動するので正解番号を覚えてしまうことを防止できます

    過去問ドリル使い方

    法令、一般知識のほか、法令につては(基礎法学、憲法<総論、人権、統治、財政>、行政法<行政手続法行政指導、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法>、民法<総則、物件、担保物件、債権>、商法、会社法、)などジャンルから選択するか、試験出題年度を選択してください。

    問題文章の後に選択肢が表示されるので、文章をタッチして解答してください

    解答画面では、過去6ヶ月間の解答について、履歴を表示するとともに、ユーザー全体の正解率を表示します。


    過去問を使った学習のヒント

    行政書士試験の本番時間は、3時間(180分) 法令46問、一般知識14問の合計60問が出題されます。

    1問あたり3分180秒で解答すれば間に合う計算になります。しかし、実際には、記述はもちろん、多肢選択、一般知識の文章読解問題は長い問題文を読んでいるだけで3分以上かかる場合もあるので180秒より速く解答する必要があります

    重要!毎日三時間用意する

    1問あたり100秒で解く(おおよそ半分の時間で一周できます)

    じゃあ残った時間は何をするのか?→解答を見る前に必ず見直すようにしてください。(回答時に自信がある問題、ない問題の目印をつけておくなど)


    過去問ドリルに取り組む前に

    一通りテキストを読み込んでから取り組みましょう。

    どの年度でもいいので初回60問といて、94点未満以下の場合はもう一度テキストを読み込む作業に戻りましょう

    300点満点中の180点取れれば合格ですので、目安として94点以上であれば、本格的に過去問ドリルに取り組んでみてください。