解答 行政書士試験 平成19年29問
民法物権
○:3.Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画は、ある日それまで面識のなかったCがBのもとに持ち込み買取りを求めたものであることがわかった。Aは、盗難の日から2年以内であれば、Bに対してまったく無償で、その絵画の引渡しを求めることができる。
○:3.Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画は、ある日それまで面識のなかったCがBのもとに持ち込み買取りを求めたものであることがわかった。Aは、盗難の日から2年以内であれば、Bに対してまったく無償で、その絵画の引渡しを求めることができる。
問29
美術商Aは、画廊に保管しておいた自己所有の絵画が盗難に遭い、悔しい思いをしていたが、ある日、Bが運営する個人美術館を訪ねた際、そこに盗まれた絵画が掲げられているのを発見した。Aは、その絵画を回収するため次のような行動をとることを考えている。Bに即時取得が成立しているとして、Aの行動に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。ただし、Cは商人ではないものとする。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画は、ある日それまで面識のなかったCがBのもとに持ち込み買取りを求めたものであることがわかった。Aは、買取りの日から2年以内であれば、Bに対して、その絵画の買取請求権を行使することができる。
☓:2.Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画は、ある日それまで面識のなかったCがBのもとに持ち込み買取りを求めたものであることがわかった。Aは、買取りの日から2年以内であれば、Bに対して、保管に要した費用を支払って、その絵画の引渡しを求めることができる。
○:3.Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画は、ある日それまで面識のなかったCがBのもとに持ち込み買取りを求めたものであることがわかった。Aは、盗難の日から2年以内であれば、Bに対してまったく無償で、その絵画の引渡しを求めることができる。
☓:4.Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画はBがオークションで落札したものであることがわかった。Aは、盗難の日から2年以内であれば、Bに対して保管に要した費用を支払って、その絵画の引渡しを求めることができる。
☓:5.Aは、Bから事情を聴いたところ、その絵画はBがオークションで落札したものであることがわかった。Aは、オークションの日から2年を超えても、Bに対してオークションで落札した金額と保管に要した費用を支払えば、その絵画の引渡しを求めることができる。
解説
1.誤り。
民法第193条の回復請求における2年間の起算は、「買取りの日から」ではなく「盗難の時から」である。
また、この場合、占有者に対して、単に「その物の回復」を請求することができるのであって(=買い取り金を支払う必要はない)、「買取請求権」を行使しているわけではない。
したがって、「Aは、買取りの日から2年以内であれば、Bに対して、その絵画の買取請求権を行使することができる。」とする本肢は誤りである。
2.誤り。
民法第193条の回復請求における2年間の起算は、「買取りの日から」ではなく「盗難の時から」である。
また、また、この場合、占有者に対して、単に「その物の回復」を請求することができるのであって、保管に要した費用を支払う必要はない。
したがって、「Aは、買取りの日から2年以内であれば、Bに対して、保管に要した費用を支払って、その絵画の引渡しを求めることができる。」とする本肢は誤りである。
3.正しい。
即時取得した場合において、その占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者等は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる(民法第193条)。
もっとも、占有者が、盗品又は遺失物を、公の市場等で善意に買い受けたときは、被害者等は、占有者が支払った代価を弁償して回復できる(民法第194条)。
本肢は、「面識のなかったCがBのもとに持ち込み買取りを求めたものであること」から、前者(民法第193条)が適用される。
したがって、Aは、盗難の日から2年以内であれば、Bに対してまったく無償で、その絵画の引渡しを求めることができる。
4.誤り。
Bはオークションを介して購入しているため、AはBに対して、「保管に要した費用」ではなく「占有者が支払った代価」すなわち当該絵画におけるオークションでの落札額を支払わなければ引渡しを求めることはできない(民法第194条)。
したがって、「Aは、盗難の日から2年以内であれば、Bに対して保管に要した費用を支払って、その絵画の引渡しを求めることができる。」とする本肢は誤りである。
5.誤り。
Aが絵画の引渡しを求めることができるのは、盗難の時から2年間である。
また、引渡しを求めるにあたって、弁償する額は「占有者が支払った代価」すなわち当該絵画におけるオークションでの落札金額のみである。
したがって、「Aは、オークションの日から2年を超えても、Bに対してオークションで落札した金額と保管に要した費用を支払えば、その絵画の引渡しを求めることができる。」とする本肢は誤りである。
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