解答 行政書士試験 平成19年32問
民法債権
○:2.二つ
○:2.二つ
問32 次のア~オの事例のうち、直接強制の方法によって債務者の債務の強制的実現を図ることができるものは、いくつあるか。
ア、銀行から500万円を借り入れた企業が、返済の期限が到来したにもかかわらず、返済をしない事例
イ、画家が、顧客との間で顧客の似顔絵を描く契約を結んだにもかかわらず、似顔絵を描こうとしない事例
ウ、カラオケボックスの経営者と周辺住民との間で騒音をめぐって紛争が起こり、夜12時から朝10時まではカラオケボックスの営業をしないとの合意が両者の間で成立したにもかかわらず、夜12時を過ぎてもカラオケボックスが営業を続けている事例
エ、ある者の名誉を毀損する記事を雑誌に掲載した出版社が、名誉毀損を理由として謝罪広告の掲載を命じる確定判決を受けたにもかかわらず、謝罪広告の掲載をしない事例
オ、建物の賃貸借契約が終了し、賃借人が建物を明け渡さなければならないにもかかわらず、賃借人が建物を占有し続けている事例
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.一つ
○:2.二つ
☓:3.三つ
☓:4.四つ
☓:5.五つ
解説
直接強制とは、国家機関の権力をもって債務者の意思に関係なく直接に債権の内容を実現させる方法である(民法414条1項)。
この手段は、金銭の支払い、特定物の引渡し等を目的とするいわゆる「与える債務」について用いることができるが、一方、絵を描いたり、ピアノを演奏したり、講演したり、物を工作したりと言ったいわゆる「為す債務」については、債務者の意思を無視して実現することはできないので、「債務の性質が強制履行を許さない」場合に該当し、直接強制を用いることはできない(同項ただし書)。
ア.直接強制できる。
貸金返還債務は、「与える債務」であり、直接強制によって債務者の財産を処分して一定の金額を調達して、これを債権者に与えることになる(民法414条1項本文、民事執行法第2章第2節)。
イ.直接強制できない。
債務者に絵を描かせる債務は、「為す債務」であり、その性質上、直接強制はできない。
なお、芸術的創作については、意思を圧迫して強制したのでは債務の本旨に沿った給付ができないことから間接強制もできないと解されている。
ウ.直接強制できない。
「○○をしない」というような債務は、「為す債務」(不作為)であり、直接強制をすることはできない。
なお、間接強制を取ることは可能である(民法第414条3項、民事執行法第172条1項)。
エ.直接強制できない。
「新聞に謝罪広告を掲載する」というような債務は、「為す債務」であり、直接強制をすることはできない。
なお、判例は、第三者が代わって為しても債権の目的を達成できるものとして、代替執行(民法第414条2項)を認めている(最判昭和31年7月4日)。
オ.直接強制できる。
建物を明け渡す債務は、「与える債務」であり、直接強制をすることができる(民法414条1項本文、民事執行法第168条1項)。
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