行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成19年7問

憲法

○:4.刑事手続については、ただ単にこれを法律で定めればよいと規定しているのではなく、その手続が適正なものであることを要求している。


問7 次の憲法の条文について一般に行われている説明として、妥当なものはどれか。

第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.「法律の定める手続」とあるので、条例によって刑罰その他についての手続を定めることは、許されていない。

☓:2.日本国憲法は別に罪刑法定主義の条文をもっているので、本条においては、戦前にないがしろにされた刑事手続について、これを法律で定めることが要請されている。

☓:3.この条文は刑事手続を念頭においており、行政手続などの非刑事手続については、その趣旨が適用されることはない。

○:4.刑事手続については、ただ単にこれを法律で定めればよいと規定しているのではなく、その手続が適正なものであることを要求している。

☓:5.この条文は、ニューディール期のアメリカ連邦最高裁判所で猛威を振るった、手続的デュープロセス論を否定したものである。

解説

1.妥当でない。
「条例は、法律以下の法令といっても、上述のように、公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であって、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。そうしてみれば、地方自治法二条三項七号及び一号のように相当に具体的な内容の事項につき、同法一四条五項のように限定された刑罰の範囲内において、条例をもつて罰則を定めることがてきるとしたのは、憲法三一条の意味において法律の定める手続によって刑罰を科するものということができる」(最大判昭和37年5月30日)。
2.妥当でない。
罪刑法定主義とは、近代刑法の基本原則であり、いかなる行為が犯罪となり、いかなる刑罰が科せられるかは、あらかじめ立法府が制定する法令において、犯罪行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則のことをいう。
日本国憲法は、法の適正手続の保障(憲法第31条)、事後法による処罰の禁止(憲法第39条)等の条項により、罪刑法定主義の原則を確認しているが、明文の規定は存在しない。
3.妥当でない。
「憲法三一条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。」(成田新法事件:最大判平4年7月1日)。
4.妥当である。
憲法31条の由来であるアメリカのデュープロセス条項の解釈(肢5参照)及び人権の手続的保証の強化という見地から、憲法31条の「法律の定める手続」は、手続・実体ともにそれらの規定の適正さを要求していると解するのが通説である。
5.妥当でない。
憲法第31条は、デュープロセス条項(※)に由来しているとされており、デュープロセス論を否定したものではない。
なお、ニューディール期のアメリカ連邦裁判所では、デュープロセス条項は、手続的適正だけでなく実体的適正をも保障するものであるとの拡張的な解釈を採用し、経済的自由を規制する多くの立法を違憲とした 。
このことを本肢は「猛威を振るった、手続的デュープロセス論」と表現しているが、一般には単に「デュープロセス論」と呼ぶか、その拡張を強調すべく「実体的デュープロセス理論」と呼ばれるため、出題者としては、「手続的デュープロセス論」という用語も誤りと想定しているのかもしれない。
※デュープロセス条項とはアメリカ合衆国憲法の以下の条文を指す。
修正5条「何人も法の適正な手続(due process of law) によらないで生命、自由及び財産を奪われない」
修正14条「いかなる州も、法の適正な手続(due process of law) によることなくしては、何人の生命、自由及び財産も、これを奪うことはできない。」


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