行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成19年9問

行政総論

○:4.路上駐車禁止は、それ自体は不作為義務であるが、警察官等は、過失なくして移動を命じる相手方を知ることができない時には、移動命令を発することなく、当該駐車車両を移動することができる。


問9

行政上の義務履行確保に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.不作為義務、非代替的作為義務の履行にかかる直接強制、執行罰の仕組みについては、一般法の根拠はないので、法律もしくは条例による個別の根拠が必要である。

☓:2.市水道局による水道サービスの料金を滞納している私人に対し、市は地方自治法に基づき、行政上の強制徴収の仕組みを用いて徴収することができる。

☓:3.即時強制は法令により個別に根拠づけられている場合にのみ認められるが、いわゆる成田新法(成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法)による建物の実力封鎖、警察官職務執行法による武器の行使がその例である。

○:4.路上駐車禁止は、それ自体は不作為義務であるが、警察官等は、過失なくして移動を命じる相手方を知ることができない時には、移動命令を発することなく、当該駐車車両を移動することができる。

☓:5.執行罰は行政上の義務履行確保の手法であるが、処罰としての実質を有するため、二重処罰禁止の法理から、刑事罰との併用ができないことが、その活用の障害となっている。

解説

1.妥当でない。
大日本帝国憲法下では、行政的な執行の通則法として、行政執行法が存在したが(行政代執行の他、執行罰、直接強制及び即時強制も定めていた)、人権の侵害度合いが強い直接強制や即時強制を抽象的に定めていることやそれが濫用等につながっているとの批判を受けて、現憲法の制定に伴って廃止され、それに代わって、代替的作為義務に関する一般的な仕組みを定める法として行政代執行法が制定され、その他の強制執行の仕組みは個別法に委ねられることになった。
そして、この個別法に委ねていることに関して、その他の強制執行の仕組みを条例で定めることはできるのか(=条例を根拠に執行できるか)、という疑問点が生じたが、通説はできないと解している。
なぜなら、行政代執行法1条では「行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。」としているが、同法2条では「法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により・・以下略・・・」としており、2条ではわざわざ条例を含むと言及されていることに照らすと、1条の「法律」には、条例は含まないと解するのが、素直な解釈だからである。
したがって、行政上の義務履行確保の手段である直接強制、執行罰の仕組みについて、条例を根拠にすることはできない。
2.妥当でない。
確かに地方自治法では、法律で定める使用料、その他普通地方公共団体の歳入等について、金銭給付義務の不履行があった場合、地方税の滞納処分の例により処分することができるとされているが(地方自治法第231条の3第3項)、水道サービスの料金は、これに含まれないため、行政上の強制徴収の仕組みを用いて徴収することはできず、民事上の強制執行手続等で徴収することになる(地方自治法施行令第171条の2)。
3.妥当でない。
即時強制とは、義務を課す事を前提とせず、目前急迫の障害を取り除くために、直接国民の身体又は財産に実力を加え、必要な状態を実現することである。
その具体例として、警察官職務執行法による武器の行使は(警察官職務執行法第7条)、即時強制にあたるが、成田新法による建物の実力封鎖は(成田新法第3条6項)、その前に一度禁止の命令を出すことが前提条件であるので即時強制ではなく直接強制にあたるとされている。
なお、「即時強制は法令により個別に根拠づけられている場合にのみ認められる」という点は、正しい(肢1参照)。
4.妥当である。
本肢は、いわゆるレッカー移動についてだが、道路交通法第51条によれば、車両の運転者等がいなければ、移動命令を発することなく、当該駐車車両を50メートルの範囲で移動ができ、周辺50メートル以内に移動する場所がなければ、警察署長に連絡の上、保管できる場所への移動ができるとしている。
なお、違法駐車におけるレッカー移動は、即時強制に分類されるというのが多数説である(直接強制にあたるという見解もある)。
5.妥当でない。
過料と刑罰の併科について判例は「両者は目的、要件および実現の手続を異にし、必ずしも二者択一の関係にあるものではなく併科することを妨げない」としている(最判昭和39年6月5日)。


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