行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成20年1問

基礎法学

○:5.法律Aと法律Bが一般法と特別法の関係にあり、Aが全面的に改正されて施行された場合には、後から施行された新しいAがBに優先して適用される。


問1

法令の適用範囲および効力等に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.わが国の法令は、原則としてわが国の領域内でのみ効力を有するが、わが国に属する船舶および航空機内では、外国の領域内や公海においても効力を有することがある。

☓:2.渉外的な要素が含まれる事件については、わが国の裁判所が外国の法令を準拠法として裁判を行うことがある一方で、外国の裁判所がわが国の法令を準拠法として裁判を行うことがある。

☓:3.法律は、その法律または他の法令に定められた日から施行されるが、施行期日の定めがない場合には、公布の日から20日を経過した日から施行される。

☓:4.法令に違反する行為に対して刑罰の定めがあり、その法令の失効前に違反行為が行われた場合には、その法令の失効後においても処罰を行うことができる。

○:5.法律Aと法律Bが一般法と特別法の関係にあり、Aが全面的に改正されて施行された場合には、後から施行された新しいAがBに優先して適用される。

解説

1.妥当である。
わが国の法の適用に関しては、自国領域内に限定されるいわゆる属地主義が原則的に採用されており(刑法第1条1項など)、本肢前半部分にある「わが国の法令は、原則としてわが国の領域内でのみ効力を有する」というのは、正しい説明となる。
また、属地主義から派生する旗国主義も採用されており(刑法第1条2項など)、わが国に属する船舶および航空機内では、外国の領域内や公海においても効力を有することがあるため、後半部分についても正しい説明となる。
なお、属地主義はあくまでも原則的なものであって、刑法では国外の一定の犯罪に対して処罰できる旨が規定されており(刑法第3条、3条の2など)、例外的に属人主義も採用されている。
2.妥当である。
法の適用に関する通則法第7条では「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。」としており、また、同法第8条では「前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。」としている。
したがって、当事者が外国人であるなど、私法関係に外国の要素がある場合(=渉外的要素がある場合)、日本の裁判所が外国の法令をその渉外的私法関係を処理するために適用する法(=準拠法)として、裁判を行うこともある。
また、外国の裁判所が日本の法令を準拠法として裁判を行うこともあり、例えば、不法行為の準拠法は原因たる事実の発生した地の法としている国が多いため、そういった国の者が日本で不法行為の当事者になって自国の裁判所で訴訟を提起した場合は、日本の法令を準拠法として裁判を行うことになる。
3.妥当である。
法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。ただし、法律でこれと異なる施行期日を定めたときは、その定めによる(法の適用に関する通則法第2条)。
なお、条例は、条例に特別の定があるものを除く外、公布の日から起算して10日を経過した日から、これを施行する(地方自治法第16条3項)。
4.妥当である。
刑事訴訟法第337条によれば、犯罪後の法令により刑が廃止されたときは判決で免訴の言渡をしなければならないとされている。しかし、その例外として「限時法の理論」というものがある。「限時法の理論」とは、法令の有効期間が、明定されている限時法においては、失効する間際の行為は、現実的にその有効期間中に処罰することは困難であり、事実上、その法の罰則規定の有効期間が短縮されてしまうため、それを防止するべく特別の規定がなくとも失効後にも処罰できるという考えで、判例において認められている。また、廃止後もなお処罰を免れないという特別の法意が含まれている場合も処罰する事は可能と解される。更には、その理由を明らかに判示しないまま、法令廃止後に処罰した判例も存在する(最大判昭和37年4月4日)。
したがって、やや言葉足りない問題文にも映るが正しい説明である。
なお、本肢の逆にあたる場合、すなわち、犯罪行為の時点にその行為が罰せられると定められていなかった場合は、たとえその後に罰則が定められても、その行為のときまで遡りその行為を罰することはできない。これは罪刑法定主義から派生する刑罰不遡及の原則によるものである。
5.妥当でない。
一般法と特別法の関係では特別法が優先して適用される(特別法優先の原則)。
また、旧法(前法)と新法(後法)では、新法(後法)が優先される(新法(後法)優先の原則)。
新法優位の原則と特別法優位の原則の関係では、特別法優先の原則が優先される。
換言すると旧法かつ特別法と新法かつ一般法を比較した場合は、旧法かつ特別法が優先されることになる。
したがって、本肢の場合は、特別法である法律Bが優先される。
こういった法律用語で説明されるといまひとつイメージがしづらいかもしれないが、実際の法律に当てはめて、例えば商法(一般法)と銀行法(特別法)の関係で見た場合、商法が全面改正されたからと言って、銀行の業務について銀行法をさしのけて商法が適用されるのはおかしいと分かるであろう。


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