行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成20年14問

行政法 行政不服審査法

○:1.行政上の不服申立ての道を開くことは、憲法上の要請ではないので、この制度を廃止しても、憲法違反とはならない。


問14

行政上の不服申立てについての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

○:1.行政上の不服申立ての道を開くことは、憲法上の要請ではないので、この制度を廃止しても、憲法違反とはならない。

☓:2.明治憲法下で行政上の不服申立てを定めていた訴願法は、行政裁判法と同時期に制定され、これと同時に廃止された。

☓:3.行政不服審査法は、行政事件訴訟法とともに、戦後改革の一環として、現行憲法の制定と同じ時期に制定された。

☓:4.憲法は、行政機関が裁判を行うことを禁止しているから、裁判手続に類似した行政上の不服申立てを整備することによって地方裁判所における審級を省略することは許されない。

☓:5.憲法による法定手続の保障の趣旨は、行政上の不服申立ての手続にも及ぶので、その手続においても、口頭弁論主義が原則とされている。

解説

.妥当である。
憲法では、行政による権利・利益の侵害に対する救済手段として、裁判を受ける権利を保証しているが(憲法第32条)、不服申立ての制度については、憲法上、明確な指針を示しておらず、この制度を置くかどうか、置くとした場合にどのような制度にするかについては、行政過程全体を通じた適正手続の要請に配慮をする必要はあるものの基本的に立法政策の問題に帰結すると解されている。
したがって、この制度を廃止しても憲法違反とはならない。
2.妥当でない。
訴願法(行政不服申立の制度を定めた行政不服審査法の前身にあたる法律)も、行政裁判法(明治憲法で認められた行政裁判所制度に対応した法律)も、制定は同時期であるが(明治23年)、廃止については、訴願法は昭和37年に行政不服審査法の施行に伴い廃止され、行政裁判法は昭和23年に裁判所法の制定に伴い廃止されたものである。
したがって、訴願法と行政裁判法は同時に廃止されてない。
3.妥当でない。
行政不服審査法(訴願法の後身)と行政事件訴訟法(行政事件訴訟特例法の後身)の制定は共に昭和37年であるが、日本国憲法の制定は昭和21年である。
したがって、同じ時期に制定されていない。
なお、訴願法は、条文数が少なく(本則は17条で構成)、また、その内容も列記主義を採用するなど、国民の権利救済という観点からは不備の多い法律であったが、このような法律が現憲法制定後もしばし残っていたというのは、肢1の論点である不服申立制度は基本的に憲法上の要請ではないという点に繋がるところである。
4.妥当でない。
憲法が禁止しているのは、行政機関が終審として裁判を行うことで(憲法第76条2項後段)、前審的な役割として行うことは可能と解されており、いわゆる行政審判がそれにあたる。
また、行政審判を経ている場合、第1審が東京高裁になるなど審級の省略が認められることもある(独占禁止法第85条、特許法第178条1項など)。
したがって、「行政上の不服申立てを整備することによって地方裁判所における審級を省略することは許されない。」とするのは誤りである。
5.妥当でない。
行政不服審査法第25条は「審査請求の審理は、書面による。ただし、審査請求人又は参加人の申立てがあつたときは、審査庁は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。」としている。
したがって、行政不服申立ては、書面審理主義が原則であって、口頭弁論主義は補足的に用いられているに過ぎない。
また、本肢前半の「憲法による法定手続の保障の趣旨は、行政上の不服申立ての手続にも及ぶ」という点は、下記判例の見解によって一定の範囲でその保証の趣旨が及びうるが、「及ぶ」とまで言い切るのはやや言い過ぎ感があろうか(完全に保証されるならば、肢1と矛盾することにもなる)。
「憲法三一条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。 しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではない」(成田新法事件最大判平成4年7月1日)


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