解答 行政書士試験 平成20年15問
行政法 行政不服審査法
○:5.不服申立てをすることができない処分については、法が列挙しているほか、他の法律において特定の処分につき不服申立てをすることができない旨を規定することができる。
○:5.不服申立てをすることができない処分については、法が列挙しているほか、他の法律において特定の処分につき不服申立てをすることができない旨を規定することができる。
問15
行政不服審査法(以下、「法」という。)に規定する不服申立ての対象に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.法において「処分」には、「人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもの」などの事実行為が含まれるが、これは取消訴訟の対象にはならないが不服申立ての対象となる行為を特に明文で指示したものである。
☓:2.法における「不作為」には、申請が法令に定められた形式上の要件に適合しないとの理由で、実質的審査を経ずに拒否処分がなされた場合も含まれる。
☓:3.法は、地方公共団体の機関が条例に基づいてする処分を適用除外としているため、そのような処分については別途条例で不服申立制度を設けなければならない。
☓:4.法は、不服申立制度全般について統一的、整合的に規律することを目的とするので、別に個別の法令で特別な不服申立制度を規定することはできない。
○:5.不服申立てをすることができない処分については、法が列挙しているほか、他の法律において特定の処分につき不服申立てをすることができない旨を規定することができる。
解説
1.誤り。
行政不服審査法では、「処分」には原則として「公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもの」が含まれると明文で規定されている(行政不服審査法第2条1項)。
一方、行政事件訴訟法では処分を「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と定義し、その点については明文で規定されてはいない(行政事件訴訟法第3条2項)。
しかし、通説は、継続的性質を有する事実行為は行政事件訴訟法の処分に含まれ、その対象になると解している。
また、下級審判例でも、継続的性質を有する事実行為にあたる旧精神衛生法の入院措置(即時強制の例)の取消訴訟で、入院措置を処分としたもの(鹿児島地判昭和54年10月26日)などがある。
したがって、「取消訴訟の対象にはならない」としている点は誤りである。
2.誤り。
行政不服審査法における「不作為」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をすべきにかかわらず、これをしないことをいう(行政不服審査法第2条2項)。
申請者の求める処分内容ではなく、且つ、実質的審査を経てない場合でも「拒否処分」は処分であるため、不作為には含まれない。
3.誤り。
行政不服審査法は、処分についての不服申立てに関して一般概括主義を採用し、広く救済の道を開いており、地方公共団体の機関が条例に基づいてする処分は、適用除外にしていないため、対象となる(行政不服審査法第4条1項参照)。
なお、行政手続法では適用除外になっており(行政手続法第3条3項)、地方公共団体には適用除外にあたるものは、必要な措置を講ずる努力義務が課せられている(行政手続法第46条)。
4.誤り。
行政不服審査法は、行政上の不服申立ての一般法であり、特別法の存在や除外規定における不服申立制度を設けることを排除しておらず(行政不服審査法第1条2項、4条2項)、実際に土地収用法・公職選挙法等において、独自に不服申立制度を定めている。
5.正しい。
行政庁の処分で不服申立てができないものには、【1】行政不服審査法に基づく処分、【2】行政不服審査法第4条1項ただし書各号に掲げる処分、【3】他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分がある(行政不服審査法第4条1項柱書)。
また、【3】を考慮しなかったとしても、肢4で説明のとおり、行政不服審査法は不服申立てに関する一般法であるから、特別法優位の原則により、他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがあれば、その規定は原則として有効となる。
なお、そのような規定の例としては、聴聞手続きを経た不利益処分は、異議申立てができない旨を定める行政手続法第27条などがある。
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