解答 行政書士試験 平成20年17問
行政事件訴訟法
○:4.再入国の許可申請に対する不許可処分について取消訴訟を提起した外国人は、本邦を出国した場合、当該処分の取消しを求める利益を失う。
○:4.再入国の許可申請に対する不許可処分について取消訴訟を提起した外国人は、本邦を出国した場合、当該処分の取消しを求める利益を失う。
問17
訴えの利益に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.建築確認処分の取消しを求める利益は、建築物の建築工事の完了によっては失われない。
☓:2.保安林指定解除処分の取消しを求める利益は、洪水の危険を解消するために代替施設が設置されたとしても失われない。
☓:3.生活保護法に基づく保護変更決定の取消しを求める利益は、原告の死亡によって失われず、原告の相続人が当該訴訟を承継できる。
○:4.再入国の許可申請に対する不許可処分について取消訴訟を提起した外国人は、本邦を出国した場合、当該処分の取消しを求める利益を失う。
☓:5.公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出された場合、当該公文書の非公開決定の取消しを求める利益は失われる。
解説
1.妥当でない。
建築確認処分の取消しを求める訴えにおいて、訴えの利益は、建築物の建築工事の完了によって失われる。
「建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」(最判昭和59年10月26日)。
2.妥当でない。
代替施設の設置により、洪水・渇水の危険が解消されれば、訴えの利益は失われる。
「保安林の指定が違法に解除され、それによって自己の利益を害された場合には、右解除処分に対する取消しの訴えを提起する原告適格を有する者ということができるけれども・・・中略・・・本件におけるいわゆる代替施設の設置によって右の洪水や渇水の危険が解消され、その防止上からは本件保安林の存続の必要性がなくなったと認められるに至ったときは、もはや乙と表示のある上告人らにおいて右指定解除処分の取消しを求める訴えの利益は失われるに至ったものといわざるをえない」(長沼ナイキ基地訴訟:最判昭和57年9月9日)
3.妥当でない。
生活保護を受ける権利は、一身専属の権利であって相続の対象にならないので、本人が死亡すると訴えの利益は失われる。
生活保護法の規定に基づき要保護者または被保護者が国から生活保護を受けるのは、個人に与えられた一身専属の権利であって、他にこれを譲渡し得ないし、相続の対象ともなり得ないというべきである。されば、本件訴訟は、上告人(原告)の死亡と同時に終了し、同人の相続人においてこれを承継し得る余地はないものといわなければならない(朝日訴訟:最大判昭和42年5月24日)。
4.妥当である。
外国人の再入国の許可申請に対する不許可処分について取消訴訟を提起後、本邦を出国した場合、当該処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
「再入国の許可申請に対する不許可処分を受けた者が再入国の許可を受けないまま本邦から出国した場合には、同人がそれまで有していた在留資格が消滅することにより、右不許可処分が取り消されても、同人に対して右在留資格のままで再入国することを認める余地はなくなるから、同人は、右不許可処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を失うに至るものと解すべきである」(最判平成10年4月10日)
5.妥当でない。
公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出されても訴えの利益は失われない。
「公開請求権者は、本件条例に基づき公文書の公開を請求して、所定の手続により請求に係る公文書を閲覧し、又は写しの交付を受けることを求める法律上の利益を有するというべきであるから、請求に係る公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出されたとしても、当該公文書の非公開決定の取消しを求める訴えの利益は消滅するものではないと解するのが相当である。」(愛知県知事交際費事件:最判平成14年2月28日)。
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