行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成20年18問

行政事件訴訟法

○:2.事情判決においては、処分が違法であることが、判決の理由の中だけではなく、その主文においても宣言される。


問18

行政事件訴訟法31条1項に規定する事情判決についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.事情判決は、処分の違法を認める判決であるから、請求認容の判決である。

○:2.事情判決においては、処分が違法であることが、判決の理由の中だけではなく、その主文においても宣言される。

☓:3.事情判決においては、処分の違法を宣言するとともに、それを理由として、被告に損害賠償を命ずることができる。

☓:4.事情判決は、行政事件訴訟に特有な制度であり、行政不服審査法には、類似の事情裁決といった制度はない。

☓:5.事情判決の規定は、公職選挙法上、同法による選挙の効力に関する訴訟にも準用されている。

解説

1.妥当でない。
事情判決は、被告へ訴訟費用を負担させ、また、原処分の違法性を宣言しているため、実質的には認容判決の側面もある。
しかし、形式的には原告の請求を棄却する判決である(行政事件訴訟法第31条1項)。
事情判決(行政事件訴訟法第31条1項)
取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。
2.妥当である。
行政事件訴訟法では、事情判決において処分が違法であることを理由で摘示しなければならない旨を明示していないが、民事訴訟の例により(行政事件訴訟法第7条)、判決書の事実の記載において、請求を明らかにし、かつ、主文が正当であることを示すのに必要な主張を摘示しなければならないため(民事訴訟法第253条)、当然に理由の中で、処分が違法である事が判示されることになる。
また、事情判決では、処分が違法であることを、判決の主文で宣言しなければならないとされている(行政事件訴訟法第31条1項:肢1参照)。
したがって、事情判決は、処分が違法であることが、判決の理由の中だけではなく、その主文においても宣言される。
なお、行政事件訴訟法の前身である行政事件訴訟特例法では、事情判決において違法を主文で宣言する旨の規定がなかったため、理由中で違法判断を示せば足りると解釈する余地があったが、行政事件訴訟法では、その点が明確にされるとともに、民事訴訟法第114条1項では主文に包含するものに限り、既判力を有するとしているため、違法性について既判力が生じることが明らかになった。
3.妥当でない。
行政事件訴訟法の事情判決は、判決の主文で違法を宣言するにとどまり、損害賠償を命ずることができる旨の規定はおかれていない。
事情判決は取消訴訟に認められているものであるところ(無効等確認訴訟で準用できるかは争い有り)、取消訴訟は損害賠償を求める訴訟ではなく、文字どおり処分の取消しを求める訴訟であるため、特段に損害賠償を命ずることができる旨の規定がおかれていない以上、事情判決を理由として、被告である国等に損害賠償を命ずることはできない。
なお、事情判決は、損害賠償がなされるか又はその合意が成立したことを前提になされることも多く、特に中間違法宣言判決の制度(行政事件訴訟法第31条2項)は、終局判決をする前に損害賠償等による和解決着をすることを期待した制度であることから、事情判決で命ずることはできないが、事情判決をなす過程でそれを勧めてくることはありうる。
4.妥当でない。
行政不服審査法においても、事情裁決の制度はある。
事情裁決(行政不服審査法第40条6項)
処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分を取り消し又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却することができる。この場合には、審査庁は、裁決で、当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。
なお、当該規定は、異議申立てでも準用されているため(行政不服審査法第48条)、事情決定の制度も存在している。
5.妥当でない。
公職選挙法では、事情判決の規定を準用していない(公職選挙法第219条1項)。
もっとも、議員定数不均衡に関する公職選挙法に基づく裁判では事情判決の法理を適用しており、「準用していない」→「よって、事情判決はない」と覚えてしまわないように注意されたい。
「右規定(※行政事件訴訟法第31条)は、公選法の選挙の効力に関する訴訟についてはその準用を排除されているが(公選法二一九条)これは、同法の規定に違反する選挙はこれを無効とすることが常に公共の利益に適合するとの立法府の判断に基づくものであるから、選挙が同法の規定に違反する場合に関する限りは、右の立法府の判断が拘束力を有し、選挙無効の原因が存在するにもかかわらず諸般の事情を考慮して選挙を無効としない旨の判決をする余地はない。しかしながら、本件のように、選挙が憲法に違反する公選法に基づいて行われたという一般性をもつ瑕疵を帯び、その是正が法律の改正なくしては不可能である場合については、単なる公選法違反の個別的瑕疵を帯びるにすぎず、かつ、直ちに再選挙を行うことが可能な場合についてされた前記の立法府の判断は、必ずしも拘束力を有するものとすべきではなく、前記行政事件訴訟法の規定に含まれる法の基本原則の適用により、選挙を無効とすることによる不当な結果を回避する裁判をする余地もありうるものと解するのが、相当である。もとより、明文の規定がないのに安易にこのような法理を適用することは許されず、殊に憲法違反という重大な瑕疵を有する行為については、憲法九八条一項の法意に照らしても、一般にその効力を維持すべきものではないが、しかし、このような行為についても、高次の法的見地から、右の法理を適用すべき場合がないとはいいきれないのである。・・・中略・・・本件においては、前記の法理にしたがい、本件選挙は憲法に違反する議員定数配分規定に基づいて行われた点において違法である旨を判示するにとどめ、選挙自体はこれを無効としないこととするのが、相当であり、そしてまた、このような場合においては、選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに、当該選挙が違法である旨を主文で宣言するのが、相当である。」(最判昭和51年4月14日)


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