行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成20年19問

行政法 国家賠償法

○:3.国家賠償法は、国または公共団体の損害賠償責任について、補充的に「民法の規定による」としているが、民法典以外の失火責任法(失火ノ責任二関スル法律)や自動車損害賠償保障法なども、ここにいう「民法の規定」に含まれる。


問19

国家賠償制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.違法な行政庁の処分に対し国家賠償請求訴訟を提起して勝訴するためには、あらかじめ当該処分に対して取消訴訟または無効確認訴訟を提起し、取消しないし無効確認の判決を得て、当該処分が違法であることを確定しておかなければならない。

☓:2.国家賠償法は、憲法17条の規定を受けて制定されたものであるので、日本国民と外国人とを区別せずに損害賠償を認めている。

○:3.国家賠償法は、国または公共団体の損害賠償責任について、補充的に「民法の規定による」としているが、民法典以外の失火責任法(失火ノ責任二関スル法律)や自動車損害賠償保障法なども、ここにいう「民法の規定」に含まれる。

☓:4.行政事件訴訟法は、行政庁が取消訴訟の対象となる処分をする場合には、当該処分の相手方に対し、取消訴訟と併せて国家賠償法1条に基づいて国家賠償訴訟を提起することができる旨教示する義務を規定している。

☓:5.国家賠償法は、憲法17条の規定を受けて制定されたものであるから、特別法において、公務員の不法行為による国または公共団体の損害賠償責任を免除し、または制限する規定を置くことは憲法違反であり、許されない。

解説

1.誤り。
「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではない」(最判昭和36年4月21日)
2.誤り。
大日本帝国憲法下では、国家無答責の法理が有力であり、原則として権力的な行政行為による損害ついては、損害賠償請求できないと考えられていたが、日本国憲法第17条では「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」とし、これを受けて国家賠償法が制定された。
したがって、前半は正しい。
しかし、国家賠償法第6条では「この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する」(相互保証主義)としているため、日本国民と外国人とを区別せずに損害賠償を認めているわけではない。
したがって、後半は誤りである。
3.正しい。
国又は公共団体の損害賠償の責任については、補充的に「民法の規定」が適用される(国家賠償法第4条)。
また、ここにいう「民法の規定」には、民法典以外に失火責任法(最判昭和53年7月17日、最判平成元年3月28日)、自動車損害賠償保障法(最判昭和46年11月19日、東京地判昭和44年4月16日)などの民法の付属法規も含まれるとするのが判例の立場である。
「公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法四条により失火責任法が適用され、当該公務員に重大な過失のあることを必要とするものといわなければならない。」(最判昭和53年7月17日)
「本件事故はもっぱらAの過失に起因するものであって、乙車を運転していた前記B巡査になんらの過失もないとし、乙車の保有者である被上告人の自賠法三条に基づく責任を認めなかった原判決は、同条の解釈適用を誤り、ひいて審理不尽、理由不備の違法を犯したものというべきであり、この違法は、原判決の結論に影響することが明らかであるから、論旨はこの点において理由があり、原判決は破棄を免れない。」(最判昭和46年11月19日)
なお、学説上では、民法の付属法規は、国家賠償法第5条(民法以外の他の法律に別段の定があるときはそれを適用する)によって適用されるという見解があり、また、判例の失火責任法の適用の仕方については批判的な意見が少なくない。
4.誤り。
行政庁が、取消訴訟を提起することができる処分を書面でする場合に教示する事項は【1】被告適格者、【2】出訴期間、【3】審査請求前置の定めがある場合のその旨、の3点である(行政事件訴訟法第46条1項)。
したがって、行政事件訴訟法には、国家賠償訴訟を提起することができる旨の教示義務を課す規定はおかれていないし、他の法律でもそのような義務は課されていない。
5.誤り。
国家賠償法は、憲法第17条の規定を受けて制定されたものであるが(肢2参照)、国家賠償法第5条では、「国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。」としており、特別法の制定や国賠責任を免除・制限する規定を置く事を禁止しているわけではない。
下記の郵便法賠償責任制限規定違憲判決でも、郵便法の一部の免責又は責任制限の規定を違憲無効としているが、国賠責任を免除・制限する規定を置くことまでを禁止しているとは述べていない。
「公務員の不法行為による国又は公共団体の損害賠償責任を免除し、又は制限する法律の規定が同条(※憲法第17条)に適合するものとして是認されるものであるかどうかは、当該行為の態様、これによって侵害される法的利益の種類及び侵害の程度、免責又は責任制限の範囲及び程度等に応じ、当該規定の目的の正当性並びにその目的達成の手段として免責又は責任制限を認めることの合理性及び必要性を総合的に考慮して判断すべきである。・・・中略・・・郵便業務従事者の軽過失による不法行為に基づき損害が生じたにとどまる場合には、法68条、73条に基づき国の損害賠償責任を免除し、又は制限することは、やむを得ないものであり、憲法17条に違反するものではないということができる。・・・中略・・・書留郵便物について、郵便業務従事者の故意又は重大な過失によって損害が生じた場合に、不法行為に基づく国の損害賠償責任を免除し、又は制限している部分は、憲法17条が立法府に付与した裁量の範囲を逸脱したものであるといわざるを得ず、同条に違反し、無効であるというべきである。・・・中略・・・特別送達郵便物について、郵便業務従事者の軽過失による不法行為に基づき損害が生じた場合に、国家賠償法に基づく国の損害賠償責任を免除し、又は制限している部分は、憲法17条に違反し、無効であるというべきである。」(最大判平成14年9月11日)


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