解答 行政書士試験 平成20年24問
地方自治法
○:5.イ・エ
○:5.イ・エ
問24 住民訴訟に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。
ア、教育委員会が教頭を退職前の1日だけ校長に任命した行為を前提に、地方公共団体の長が行った退職手当の支給は、任命行為が違法であるならば当然に違法となる。
イ、懲戒免職処分とすべきところを違法に分限免職処分とした上で行われた退職手当の支給は、当該分限免職処分が退職手当の支給の直接の原因であるから、当然に違法となる。
ウ、地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して契約を締結した場合には、当該契約に基づく債務の履行は当然に違法となる。
エ、県議会議長が発した議員の野球大会参加のための旅行命令書に基づき知事の補助職員が行った公金の支出は、当該旅行命令が違法であったとしても適法となる余地がある。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.ア・イ
☓:2.ア・ウ
☓:3.ア・エ
☓:4.イ・ウ
○:5.イ・エ
解説
ア.誤り。
教育委員会が教頭を退職前の1日だけ校長に任命した行為を前提に、地方公共団体の長が行った退職手当の支給は、任命行為が違法であっても退職手当の支給行為自体が財務会計法規上の義務に違反するものでなければ当然に違法とはならない。
「当該職員の財務会計上の行為をとらえて右の規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは、たといこれに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても、右原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当である。・・・中略・・・東京都教育委員会は、東京都内の公立学校において教頭職にある者のうち勧奨退職に応じた二九名について、昭和五八年三月三一日付けで校長に任命した上、・・・中略・・・さらに、同日右二九名につき退職承認処分(以下「本件退職承認処分」という。)をした、(2) 東京都教育委員会の所掌に係る事項に関する予算の執行権限を有する東京都知事である被上告人は、本件昇格処分及び本件退職承認処分に応じて、右昇給後の号給を基礎として算定した退職手当につき本件支出決定をし、右二九名は右退職手当の支給を受けた、というのである。そして、以上の事実関係並びに原審の適法に確定した本件昇格処分及び本件退職承認処分の経緯等に関するその余の事実関係の下において、本件昇格処分及び本件退職承認処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものとは解し得ないから、被上告人としては、東京都教育委員会が行った本件昇格処分及び本件退職承認処分を前提として、これに伴う所要の財務会計上の措置を採るべき義務があるものというべきであり、したがって、被上告人のした本件支出決定が、その職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされた違法なものということはできない。」(最判平成4年12月15日)
イ.正しい。
懲戒免職処分とすべきところを違法に分限免職処分とした上で行われた退職手当の支給は、懲戒免職処分であれば退職手当の支給は発生せず、当該分限免職処分が退職手当の支給の直接の原因であるから、前者が違法であれば、後者も当然に違法となる(最判昭和60年9月12日)。
ウ.誤り。
「当該契約が仮に随意契約の制限に関する法令に違反して締結された点において違法であるとしても、それが私法上当然無効とはいえない場合には、普通地方公共団体は契約の相手方に対して当該契約に基づく債務を履行すべき義務を負うのであるから、右債務の履行として行われる行為自体はこれを違法ということはできず、このような場合に住民が法二四二条の二第一項一号所定の住民訴訟の手段によって普通地方公共団体の執行機関又は職員に対し右債務の履行として行われる行為の差止めを請求することは、許されないものというべきである。」(最判昭和62年5月19日)
エ.正しい。
判例は、前掲最判平成4年12月15日判決を引用し、先行する原因行為に違法事由がある場合であっても、原因行為を前提にしてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときでなければ、損害賠償責任を問うことはできないとした上で、当該旅行命令は違法ではあるが、野球大会の開催趣旨、長く参加してきた歴史やその目的を考慮すると、著しく合理性を欠き、そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵があるとまでいうことはできない以上、知事としては、県議会議長が行った旅行命令を前提として、これに伴う所要の財務会計上の措置を執る義務があるものというべきで、知事に代わって専決の権限を有する者が議員に対する旅費についての支出負担行為及び支出命令をしても、財務会計法規上の義務に違反してされた違法なものであるということはできないとした(最判平成15年1月17日)。
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