解答 行政書士試験 平成20年26問
行政総論
○:4.自動車検問は国民の自由の干渉にわたる可能性があるが、相手方の任意の協力を求める形で、運転手の自由を不当に制約するものでなければ、適法と解される。
○:4.自動車検問は国民の自由の干渉にわたる可能性があるが、相手方の任意の協力を求める形で、運転手の自由を不当に制約するものでなければ、適法と解される。
問26
行政調査に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.保健所職員が行う飲食店に対する食品衛生法に基づく調査の手続は、行政手続法の定めるところに従って行われなければならない。
☓:2.税務調査については、質問検査の範囲・程度・時期・場所等について法律に明らかに規定しておかなければならない。
☓:3.警察官職務執行法2条1項の職務質問に付随して行う所持品検査は、検査の必要性・緊急性があれば、強制にわたることがあったとしても許される。
○:4.自動車検問は国民の自由の干渉にわたる可能性があるが、相手方の任意の協力を求める形で、運転手の自由を不当に制約するものでなければ、適法と解される。
☓:5.税務調査の質問・検査権限は、犯罪の証拠資料の収集などの捜査のための手段として行使することも許される。
解説
1.誤り。
行政手続法第2章~4章の2の適用除外として、同法第3条14号は、「報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分及び行政指導」を挙げているが、これは行政調査を適用除外にする趣旨である。
したがって、行政手続法の定めるところに従って行う必要はない。
なお、保健所職員が行う飲食店に対する食品衛生法に基づく調査の手続は、食品衛生法及び食品衛生法施行令に従って行われ、例えば、職員が臨検検査又は収去をさせる場合は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならないとされている(食品衛生法第28条2項)。
2.誤り。
質問検査の範囲・程度・時期・場所等については、税務職員の合理的な選択に委ねられているため、法律に明らかに規定しておかなくてよい。
「所得税法234条1項(現在、所得税法234条は削除)の規定は、国税庁、国税局または税務署の調査権限を有する職員において、当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合には、前記職権調査の一方法として、同条1項各号規定の者に対し質問し、またはその事業に関する帳簿、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行なう権限を認めた趣旨であって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている」(最判昭和48年7月10日)
3.誤り。
職務質問に付随して行う所持品検査は、検査の必要性・緊急性があっても、強制にわたるものは、令状主義に反して許されない。
「所持品検査は、任意手段である職務質問の附随行為として許容されるのであるから、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であることはいうまでもない。しかしながら、職務質問ないし所持品検査は、犯罪の予防、鎮圧等を目的とする行政警察上の作用であって、流動する各般の警察事象に対応して迅速適正にこれを処理すべき行政警察の責務にかんがみるときは、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査においても許容される場合があると解すべきである。」(最判昭和53年6月20日)
4.正しい。
自動車検問は任意の協力を求める形で、運転手の自由を不当に制約するものでなければ、適法と解される。
「警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。」(最判昭和55年9月22日)
5.誤り。
税務調査の質問・検査権限は、犯罪の証拠資料の収集などの捜査のための手段として行使することは許されない。
「法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)156条によると、同法153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限は、犯罪の証拠資料を取得収集し、保全するためなど、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されないと解するのが相当である。しかしながら、上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならないというべきである。」(最判平成16年1月20日)
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