行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成20年27問

民法総則

○:5.イ・オ


問27 Aが自己の所有する甲土地をBと通謀してBに売却(仮装売買)した場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア、Bが甲土地をAに無断でCに転売した場合に、善意のCは、A・B間の売買の無効を主張して、B・C間の売買を解消することができる。
イ、Bが甲土地をAに無断でCに転売した場合に、善意のCに対して、AはA・B間の売買の無効を対抗することはできないが、Bはこれを対抗することができる。
ウ、Aの一般債権者Dは、A・B間の売買の無効を主張して、Bに対して、甲土地のAへの返還を請求することができる。
エ、Bが甲土地につきAに無断でEのために抵当権を設定した場合に、Aは、善意のEに対して、A・B間の売買の無効を対抗することができない。
オ、Bの一般債権者FがA・B間の仮装売買について善意のときは、Aは、Fに対して、Fの甲土地に対する差押えの前であっても、A・B間の売買の無効を対抗することができない。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.ア・イ

☓:2.ア・ウ

☓:3.ア・オ

☓:4.イ・エ

○:5.イ・オ

解説

ア.妥当である。
民法第94条2項によれば、虚偽表示における善意の第三者にあたるCは、A・B間の売買が有効である旨の主張が可能であるが、同規定の趣旨はあくまでも善意の第三者の保護であるため、善意の第三者Cが、売買が有効であることを望まないのであれば、同条1項の原則どおり、A・B間の売買は無効であると主張することもできる。
したがって、Cは無効を主張し、B・C間の売買を解消することができる。
イ.妥当でない。
民法第94条2項は、「意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない」と規定しているが、これは当事者いずれもが善意の第三者に無効を主張できないことを意味する。
したがって、AもBも、A・B間の売買の無効を善意の第三者たるCに対抗することはできない。
ウ.妥当である。
民法第94条1項は、「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。」と規定しているが、無効は、誰からでも主張することができるのが原則であるから(民法第120条参照)、Aの一般債権者Dは、虚偽表示の無効を主張することができる。
そして、一般債権者Dは、自己の債権を保全するために、債権者代位権の行使をする(民法第423条)、すなわちAのBに対する甲土地の返還請求を代位して請求することができる。
なお、一部の過去問集で、虚偽表示の無効は相対的にしか効力を持たないと解して、本肢を「誤り」にしているものがあるが(本肢を「誤り」にしても解答自体は5で変わらない)、錯誤無効について相対的な効力と解した判例はあるものの(最判昭和40年9月10日)、虚偽表示の無効でそのように解した判例・学説は見当たらず、また、本肢の事案を民法94条1項の典型事例に挙げて、債権者が無効を主張できると説明している基本書も少なくないことから(民法Ⅰ内田貴:東京大学出版会など)、単純な解説ミスと思われる。
エ.妥当である。
民法第94条2項の「第三者」とは、虚偽表示の当事者又はその包括承継人以外の者であって、その表示目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいう(大判大正9年7月23日)。
そして、虚偽表示による譲受人からその目的物について抵当権の設定を受けた者は、民法第94条2項の「第三者」に含まれる(大判昭和6年10月24日)。
したがって、Aは善意の第三者たるEに対して、A・B間の売買の無効を対抗することはできない(民法第94条2項)。
オ.妥当でない。
民法第94条2項の「第三者」とは、虚偽表示の当事者又はその包括承継人以外の者であって、その表示目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいう(大判大正9年7月23日)。
そして、相手方Bの一般債権者であるFは、土地を差し押さえれば民法第94条2項の「第三者」にあたるが(大判昭和12年2月9日)、土地を差し押さえる前の一般債権者は民法第94条2項の「第三者」にあたらない(大判昭和18年12月22日)。
したがって、Aは、Fに対して、A・B間の売買の無効を対抗することができる。


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