解答 行政書士試験 平成20年29問
民法物権
○:3.AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売したところ、Bに代金不払いが生じたため、AはBに対し相当の期間を定めて履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場合に、Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。
○:3.AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売したところ、Bに代金不払いが生じたため、AはBに対し相当の期間を定めて履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場合に、Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。
問29
A・Bが不動産取引を行ったところ、その後に、Cがこの不動産についてBと新たな取引関係に入った。この場合のCの立場に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当でないものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売したところ、AがBの詐欺を理由に売買契約を取り消した場合に、Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。
☓:2.AからBに不動産の売却が行われた後に、AがBの詐欺を理由に売買契約を取り消したにもかかわらず、Bがこの不動産をCに転売してしまった場合に、Cは善意であっても登記を備えなければ保護されない。
○:3.AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売したところ、Bに代金不払いが生じたため、AはBに対し相当の期間を定めて履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場合に、Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。
☓:4.AからBに不動産の売却が行われたが、Bに代金不払いが生じたため、AはBに対し相当の期間を定めて履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場合に、Bから解除後にその不動産を買い受けたCは、善意であっても登記を備えなければ保護されない。
☓:5.AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売したところ、A・Bの取引がA・Bにより合意解除された場合に、Cは善意であっても登記を備えなければ保護されない。
解説
1.妥当である。
詐欺による意思表示の取消しは、取消前の善意の第三者に対抗することができない(民法第96条3項、大判昭和17年9月30日)。
また、この場合、対抗要件たる登記は必要ない(最判昭和49年9月26日)。
したがって、Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。
2.妥当である。
民法第96条3項の「第三者」とは、取消前から既に法律行為の効力について利害関係を有する第三者であり、取消後に利害関係を有するに至った第三者と売主との不動産の物権変動は、民法177条に基づき登記によって決定される(大判昭和17年9月30日)。
また、対抗関係に立つ場合は第三者の善意・悪意は、原則として問われない(大判明治45年6月1日)。
したがって、AとCは対抗関係に立つことになるため(Bを基点とした二重譲渡と同様に捉える)、Cは善意であっても登記を備えなければ保護されない。
3.妥当でない。
民法第545条1項但書は、契約の解除は第三者の権利を害することはできないとしているが、判例は、ここにいう「第三者」として、保護されるためには、登記していることが必要としている(大判大正10年5月17日、最判昭和33年6月14日)。
したがって、Cは善意であっても登記を備えなければ保護されない。
4.妥当である。
不動産の売買契約が解除され、不動産の所有権が売主に復帰した場合でも、売主はその所有権取得の登記を了しなければ、契約解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し、対抗し得ないのであって、これは、第三者が善意であると否とにかかわらない(大判昭和14年7月7日、最判昭和35年11月29日)。
したがって、AとCは対抗関係に立つことになり、Cは、善意であっても登記を備えなければ保護されない。
5.妥当である。
合意解約は民法545条の解除ではないが、それが契約の時に遡って効力を有する趣旨であるときは、別異に考えるべき理由は何もないから、合意解約についても第三者の権利を害することはできない。しかし、この第三者として保護されるには、その所有権について不動産登記の経由されていることを必要とする(最判昭和33年6月14日)。
したがって、Cが保護されるためには、登記が必要となる。
なお、肢3、4、5をまとめて言えば契約解除(合意解除を含め)においては、契約の解除前でも、契約の解除後でも、対抗するには登記の具備が必要ということである。
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