解答 行政書士試験 平成20年30問
民法債権
○:1.ア・イ・オ
○:1.ア・イ・オ
問30 Aは、自己所有の土地につき、Bとの間で賃貸借契約を締結した(賃借権の登記は未了)。AがBにこの土地の引渡しをしようとしたところ、この契約の直後にCがAに無断でこの土地を占拠し、その後も資材置場として使用していることが明らかとなった。Cは明渡請求に応ずる様子もないため、AとBは、Cに対して次のア~オの法的対応を検討している。これらの対応のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア、Aが、Cの行為を不法行為として損害賠償請求をすること。
イ、Aが、自己の土地所有権に基づき土地明渡請求をすること。
ウ、Bが、自己の不動産賃借権に基づき土地明渡請求をすること。
エ、Bが、占有回収の訴えに基づき土地明渡請求をすること。
オ、Bが、AがCに対して行使することができる、所有権に基づく土地明渡請求権を代位行使すること。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
○:1.ア・イ・オ
☓:2.ア・ウ・エ
☓:3.イ・ウ・エ
☓:4.イ・エ・オ
☓:5.ウ・エ・オ
解説
ア.妥当である。
CはAの土地を無断で土地を占拠し、故意又は過失により損害を与えており、これはAの所有権を侵害していることにあたるため、AはCに対して不法行為に基づく損害賠償を請求することができる(民法第709条)。
イ.妥当である。
Aは土地所有権を有しているため、それを侵害された場合は、物権的請求権である土地明渡請求(妨害排除請求)をすることができる(民法第206条)。
したがって、Aは、自己の土地所有権に基づき土地明渡請求をすることができる。
ウ.妥当でない。
本来、土地明渡請求(妨害排除請求)は物権に基づく権利であるが、対抗力を備えた不動産賃借権であれば、直接、賃借権に基づいて土地明渡請求ができるとされている(最判昭和28年12月28日、最判昭和30年4月5日など)。
しかし、本問ではBの賃借権は登記未了、すなわち対抗要件を具備していないため、Bは土地明渡請求ができない。
エ.妥当でない。
占有の訴えのうち、占有回収の訴えは占有者がその占有を奪われたときに、その物の返還及び損害の賠償を請求するものである(民法第197、200条1項)。
しかし、本問では「Bにこの土地の引渡しをしようとしたところ」であり、Bは、いまだ土地の引渡しを受けていないのだから、土地の占有者とはいえない。
したがって、Bは占有回収の訴えに基づき土地明渡請求をすることはできない。
オ.妥当である。
債権者代位権では、被保全債権は原則として金銭債権となるが、不動産上の賃借権のような特定債権保全のために債権者代位権を転用することは判例によって認められている(大判大正9年11月11日、大判昭和4年12月16日)。
なお、肢ウで解説の通り対抗力を備えた不動産賃借権である場合は、直接、賃借権に基づいて妨害排除請求ができるため、本肢のように対抗力を備えてない不動産賃借権の場合に代位行使することになる。
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