行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成21年1問

基礎法学

○:5.(ア)誤 (イ)正 (ウ)誤 (エ)誤


問1 法律・政省令・条例など、各種の法規の概念や相互の関係等に関する次のア~エの記述について、その正誤の組合せとして妥当なものはどれか。

ア、地方議会が制定する法規が「条例」、知事や市町村長など自治体の長ならびに教育委員会、公安委員会などの行政委員会が定める法規が「命令」であって、総称した概念が「条令」である。
イ、法律と法律、条例と条例など、形式的な効力が同等の法規の間に矛盾抵触が生じる場合は、一般に、「特別法は一般法に優先する」「後法は前法に優先する」という法原則に従って処理されることになる。
ウ、教育基本法、環境基本法など「基本法」という名称を持つ法律は、法律の形式をとってはいるものの各議院の特別多数決を経て制定される特別の法律であるから、通常の法律をもって基本法の規定を改廃することはできない。
エ、現行憲法は最高裁に対し、国会が制定した法律が憲法に適合するか否かを審査する違憲審査権を付与したが、この審査権の対象はあくまでも法律だけであるから、内閣の制定する政令や地方議会の制定する条例は違憲審査の対象にならない。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.(ア)正 (イ)正 (ウ)正 (エ)誤

☓:2.(ア)誤 (イ)誤 (ウ)誤 (エ)正

☓:3.(ア)正 (イ)誤 (ウ)正 (エ)誤

☓:4.(ア)誤 (イ)正 (ウ)誤 (エ)正

○:5.(ア)誤 (イ)正 (ウ)誤 (エ)誤

解説

.誤り。
地方議会が制定する法規が「条例」である点は正しい(地方自治法第14条1項、2条2項)。しかし、自治体の長及び行政委員会が定める法規は、「規則」であり(地方自治法第15条1項、138条の4第2項)、「命令」は行政機関が制定する法規のことである。また、「条令」とは箇条書きになっている法令(条例、命令も含む)のことである。なお、「条例」と「規則」を総称した概念ないし用語としては「例規」と呼ばれることがある(地方自治例規集など)。また、条例に規則を含めて使われることもあり、例えば、憲法第94条における条例には、規則も含まれると解されている。
イ.正しい。
同等の法規間で矛盾抵触が生じる場合は、一般に、「特別法は一般法に優先する」「後法は前法に優先する」という法原則に従って処理される。
「特別法は一般法に優先する」とは、いわゆる「特別法優位の原則」のことで、一般法は、適用対象を広くした一般的な法であるのに対し、特別法は、適用対象を狭め、特別な立場の人や事柄などに適用される法であるため、その性質上、特別法が優先されるということである。例えば、民法(一般法)と商法(特別法)の関係がこれにあたる。
次に、「後法は前法に優先する」とは、いわゆる「新法(後法)優先の原則」のことである。これは、必要が生じて新しい法が制定されたと考えれば、新法(後法)が優先されるのは、当然の理屈といえよう。また、これと同じような意味の法諺で「後法は前法を破る」、「後法は前法を廃する」などがある。
なお、新法優位の原則と特別法優位の原則の関係では、特別法優先の原則が優先される。換言すると旧法かつ特別法と新法かつ一般法を比較した場合は、旧法かつ特別法が優先されることになる。例えば、会社法(一般法)と銀行法(特別法)の関係で見た場合、会社法は平成18年施行の新しい法律ではあるが、銀行の業務については銀行法が適用されることになる。
ウ.誤り。
基本法とは、国の制度・政策に関する理念、基本方針を示すとともに、これらに沿った措置を講ずべきことを定めている法律で、本肢における教育基本法、環境基本法の他、土地基本法、高齢社会対策基本法、科学技術基本法などがある。また、基本法の方針等を受けて、それに適合するような個別法が制定され、行政諸施策を遂行するという流れになるため、基本法は「親法」として優越的な地位をもち、他の法律や行政を指導・誘導する役割がある。しかし、形式的な効力においては、他の法律と異なるわけではなく、制定・改廃は憲法59条1項における「法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。」に沿って、他の法律と同様の手続で行われる(制定手続きが異なるのは憲法のみ)。また、通常の法律をもって基本法の規定を改廃することもできる。
なお、本肢に出てくる「特別多数決」とは、通常の過半数以上の賛成という要件以上に加重された次の多数決をいう。
憲法の規定事案加重要件
第55条議員の資格争訟において、その議員の議席を失わせる議決出席議員の3分の2以上
第57条1項会議を秘密会とする議決出席議員の3分の2以上
第58条2項議員の除名出席議員の3分の2以上
第59条2項2衆議院における法律案の再議決出席議員の3分の2以上
第96条1項憲法改正の発議総議員の3分の2以上
エ.誤り。
憲法81条は「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定している。すなわち、一切の法律(ここに「条例」が含まれる)、命令(ここに「政令」が含まれる)、規則、処分も違憲審査の対象である。また、憲法第94条の「地方公共団体は・・・法律の範囲内で条例を制定することができる。」からも、条例が違憲審査の対象となることが読み取れよう。


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