解答 行政書士試験 平成21年17問
行政事件訴訟法
○:4.執行停止は、本案について理由がないとみえるときはすることができないのに対して、仮の義務付けおよび仮の差止めは、本案について理由があるとみえるときでなければすることができない。
○:4.執行停止は、本案について理由がないとみえるときはすることができないのに対して、仮の義務付けおよび仮の差止めは、本案について理由があるとみえるときでなければすることができない。
問17
行政事件訴訟法に関する次のア~オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、行政事件訴訟法の定める執行停止、仮の義務付けおよび仮の差止めのほか、民事保全法に規定する仮処分を行うことができる。
☓:2.仮の義務付けおよび仮の差止めは、それぞれ義務付け訴訟ないし差止め訴訟を提起しなければ申し立てることができないが、執行停止については、取消訴訟または無効等確認訴訟を提起しなくても、単独でこれを申し立てることができる。
☓:3.申請に対する拒否処分に対して執行停止を申し立て、それが認められた場合、当該申請が認められたのと同じ状態をもたらすことになるので、その限りにおいて当該処分について仮の義務付けが認められたのと変わりがない。
○:4.執行停止は、本案について理由がないとみえるときはすることができないのに対して、仮の義務付けおよび仮の差止めは、本案について理由があるとみえるときでなければすることができない。
☓:5.処分の執行停止は、当該処分の相手方のほか、一定の第三者も申し立てることができるが、処分の仮の義務付けおよび仮の差止めは、当該処分の相手方に限り申し立てることができる。
解説
1.誤り。
民事訴訟では、勝訴しても無意味とならないように、民事保全法にて仮処分という制度を設けているところ、行政事件訴訟では、それにかわる手段として、必要に応じて執行停止(行政事件訴訟法第25条2項)、仮の義務付け(行政事件訴訟法37条の5第1項)および仮の差止め(行政事件訴訟法37条の5第2項)が認められているため、民事保全法に規定する仮処分をすることはできない(行政事件訴訟法第44条)。
2.誤り。
仮の義務付けおよび仮の差止めは、それぞれ義務付け訴訟ないし差止め訴訟を提起しなければ申し立てることができないという点は正しい(行政事件訴訟法第37条の5第1項、2項)。しかし、執行停止についても、行政事件訴訟法第25条2項では「処分の取消しの訴えの提起があった場合において・・・中略・・・執行停止をすることができる。」としており、取消訴訟または無効等確認訴訟を提起していることが必要である(行政事件訴訟法第25条2項、38条3項)。
3.誤り。
申請に対する拒否処分に対して執行停止を申し立てて、仮に執行停止のうち一番強力な「処分の効力の停止」が認められても、申請をした状態になるだけであるから、当該申請が認められたのと同じ状態になるわけではない。したがって、当該処分について「仮の義務付けが認められたのと変わりがない。」とは言えない。
4.正しい。
執行停止は、「本案について理由がないとみえるときは、することができない」(行政事件訴訟法第25条4項)のに対して、仮の義務付けおよび仮の差止めは、「本案について理由があるとみえるときは、・・・命ずることができる。(=本案について理由があるとみえるときでなければすることができない。)」(行政事件訴訟法第37条の5第1項、2項)とされる。
この言い回しの違いについては、いずれも暫定的な仮の救済措置ではあるものの仮の義務付けおよび仮の差止めの方が執行停止より強力な効果を付与されたものであるため、その要件についても仮の義務付けおよび仮の差止めの方がより厳格になされているものである。
5.誤り。
処分の執行停止、処分の仮の義務付けおよび仮の差止めのいずれも申し立てることができるのは、その前提となる訴訟を提起した者となるが、それぞれの前提となる訴訟の原告適格は次のようになっている。
仮の救済措置訴訟の種類規定原告適格
執行停止取消訴訟行政事件訴訟法第9条1項法律上の利益を有する者
無効等確認訴訟同法第36条法律上の利益を有する者
仮の義務付け非申請型義務付け訴訟同法第37条の2第3項法律上の利益を有する者
申請型義務付け訴訟同法第37条の3第2項申請又は審査請求をした者
仮の差止め差止め訴訟同法第37条の4第3項法律上の利益を有する者
そして、「法律上の利益を有する者」とは、処分の相手方に限られないため、申請型義務付け訴訟以外では、処分の相手方のほかに一定の第三者も申し立てができることになる。
したがって、本肢は「処分の仮の義務付けおよび仮の差止めは、当該処分の相手方に限り申し立てることができる。」としている点が誤りとなる。
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