行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成21年19問

行政法 国家賠償法

○:1.公の営造物とは、国や公共団体が所有するすべての物的施設をいうわけではなく、公の用に供しているものに限られる。


問19

国家賠償法2条にいう公の営造物に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

○:1.公の営造物とは、国や公共団体が所有するすべての物的施設をいうわけではなく、公の用に供しているものに限られる。

☓:2.公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうが、賠償責任が成立するのは、当該安全性の欠如について過失があった場合に限られる。

☓:3.河川・海浜等の自然公物は公の営造物に当たらないが、これに付随する堤防や防波堤は人工公物であり公の営造物に当たるので、賠償責任が成立するのは、堤防等に起因する損害の場合に限られる。

☓:4.公の営造物の管理者と費用負担者とが異なる場合、被害者に対して損害賠償責任を負うのは、費用負担者に限られる。

☓:5.公の営造物の設置または管理に起因する損害について賠償を請求することができるのは、その利用者に限られる。

解説

1.正しい。
国家賠償法第2条における公の営造物とは、広く公の目的に供せられる物的施設を指称するため(東京高判昭和29年9月15日)、国や公共団体が所有するすべての物的施設をいうわけではない。例えば、行政財産たる国有林野は直接に公の目的に供されていないとして公の営造物ではないとされている(長野地松本支判昭和54年3月1日)。
2.誤り。
国家賠償法第2条の責任は、無過失責任とされている。
「国家賠償法二条一項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としない」(高知落石事件:最判昭和45年8月20日) 
3.誤り。
国家賠償法2条1項では、条文上でその対象として「河川」を上げており、人工公物に限られず、自然公物も対象になる。したがって、賠償責任が成立するのは、堤防等に起因する損害の場合に限られるわけではない。
国家賠償法第2条
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
4.誤り。
国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる(国家賠償法第3条)。
したがって、公の営造物の管理者と費用負担者の双方が責任を負う。
5.誤り。
国家賠償法2条における責任は、営造物の利用者に限られた責任ではなく、利用者以外の第三者に対しても及ぶ。
国営空港における航空機の騒音問題において、空港周辺住民の国家賠償請求に対し、判例は「国家賠償法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、そこにいう安全性の欠如は~、その営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解すべきである」として、国の賠償責任を認めている(最大判昭和56年12月16日)。また、一般国道等の道路の周辺住民がその供用に伴う自動車騒音等により受けた被害が社会生活上受忍すべき限度を超え、道路の設置又は管理には瑕疵があるというべきであるとして、国家賠償請求を認めている(最判平成7年7月7日)。


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