行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成21年20問

行政法 国家賠償法

○:4.鉱山労働者を保護するための省令が後に科学的知見に適合しない不十分な内容となったとしても、制定当時の科学的知見に従った適切なものである場合には、省令を改正しないことが、被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。


問20

権限の不行使と国家賠償責任に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.宅地建物取引業法に基づき免許を更新された業者が不正行為により個々の取引関係者に対して被害を負わせたとしても、当該免許制度は業者の人格・資質等を一般的に保証するものとはにわかに解しがたく、免許権者が更新を拒否しなかったことは、被害を受けた者との関係において直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

☓:2.医薬品の副作用による被害が発生した場合であっても、監督権者が当該被害の発生を防止するために監督権限を行使しなかった不作為は、不作為当時の医学的・薬学的知見の下で当該医薬品の有用性が否定されるまでに至っていない場合には、被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

☓:3.国または公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となる。

○:4.鉱山労働者を保護するための省令が後に科学的知見に適合しない不十分な内容となったとしても、制定当時の科学的知見に従った適切なものである場合には、省令を改正しないことが、被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

☓:5.犯罪被害者が公訴の提起によって受ける利益は、公益上の見地に立って行われる公訴の提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず、法律上保護された利益ではないので、検察官の不起訴処分は、犯罪被害者との関係で国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

解説

1.正しい。
「(宅建業者の免許制度は)究極的には取引関係者の利益の保護に資するものではあるが、・・・中略・・・免許を付与した宅建業者の人格・資質等を一般的に保証し、ひいては当該業者の不正な行為により個々の取引関係者が被る具体的な損害の防止、救済を制度の直接的な目的とするものとはにわかに解し難く、かかる損害の救済は一般の不法行為規範等に委ねられているというべきであるから、知事等による免許の付与ないし更新それ自体は、法所定の免許基準に適合しない場合であっても、当該業者との個々の取引関係者に対する関係において直ちに国家賠償法一条一項にいう違法な行為に当たるものではないというべきである。」(最判平成元年11月24日)
2.正しい。
「医薬品の副作用による被害が発生した場合であっても、厚生大臣が当該医薬品の副作用による被害の発生を防止するために前記の各権限を行使しなかったことが直ちに国家賠償法一条一項の適用上違法と評価されるものではなく、副作用を含めた当該医薬品に関するその時点における医学的、薬学的知見の下において、前記のような薬事法の目的及び厚生大臣に付与された権限の性質等に照らし、右権限の不行使がその許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使は、副作用による被害を受けた者との関係において同項の適用上違法となるものと解するのが相当である。」(最判平成7年6月23日)
3.正しい。
本肢は、三井鉱山じん肺訴訟判決(最判平成16年4月27日)や水俣病訴訟判決(最判平成16年10月15日)等に出てくる一文であるが、当該法理自体は、肢1の最判平成元年11月24日で示されたものである。
「国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である」(三井鉱山じん肺訴訟:最判平成16年4月27日)
4.誤り。
省令制定当時の科学的知見に従った適切なものであっても、その後に科学的知見に適合しない不十分な内容となれば、その権限を直ちに行使して省令を改正しなければ、被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
「通商産業大臣は、遅くとも、昭和35年3月31日のじん肺法成立の時までに、前記のじん肺に関する医学的知見及びこれに基づくじん肺法制定の趣旨に沿った石炭鉱山保安規則の内容の見直しをして、石炭鉱山においても、衝撃式さく岩機の湿式型化やせん孔前の散水の実施等の有効な粉じん発生防止策を一般的に義務付ける等の新たな保安規制措置を執った上で、鉱山保安法に基づく監督権限を適切に行使して、上記粉じん発生防止策の速やかな普及、実施を図るべき状況にあったというべきである。そして、上記の時点までに、上記の保安規制の権限(省令改正権限等)が適切に行使されていれば、それ以降の炭坑労働者のじん肺の被害拡大を相当程度防ぐことができたものということができる。本件における以上の事情を総合すると、昭和35年4月以降、鉱山保安法に基づく上記の保安規制の権限を直ちに行使しなかったことは、その趣旨、目的に照らし、著しく合理性を欠くものであって、国家賠償法1条1項の適用上違法というべきである。」(三井鉱山じん肺訴訟:最判平成16年4月27日)
5.正しい。
「犯罪の捜査及び検察官による公訴権の行使は、国家及び社会の秩序維持という公益を図るために行われるものであって、犯罪の被害者の被侵害利益ないし損害の回復を目的とするものではなく、また、告訴は、捜査機関に犯罪捜査の端緒を与え、検察官の職権発動を促すものにすぎないから、被害者又は告訴人が捜査又は公訴提起によつて受ける利益は、公益上の見地に立って行われる捜査又は公訴の提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず、法律上保護された利益ではないというべきである。」(最判平成2年2月20日)


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