行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成21年28問

民法総則

○:4.Cの相談とEの相談


問28 時効に関する次のA~Eの各相談に関して、民法の規定および判例に照らし、「できます」と回答しうるものの組合せはどれか。

Aの相談:「私は13年前、知人の債務を物上保証するため、私の所有する土地・建物に抵当権を設定しました。知人のこの債務は弁済期から11年が経過していますが、債権者は、4年前に知人が債務を承認していることを理由に、時効は完成していないと主張しています。民法によれば、時効の中断は当事者及びその承継人の間においてのみその効力を有するとありますが、私は時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求できますか。」
Bの相談:「私は築25年のアパートを賃借して暮らしています。このアパートは賃貸人の先代が誤って甲氏の所有地を自己所有地と認識して建ててしまったものですが、これまで特に紛争になることもなく現在に至っています。このたび、甲氏の相続人である乙氏が、一連の事情説明とともにアパートからの立ち退きを求めてきました。私は賃貸人が敷地の土地を時効取得したと主張して立ち退きを拒否できますか。」
Cの相談:「30年程前に私の祖父が亡くなりました。祖父は唯一の遺産であった自宅の土地・建物を祖父の知人に遺贈したため、相続人であった私の父は直ちに遺留分を主張して、当該土地・建物についての共有持分が認められたのですが、その登記をしないまま今日に至っています。このたび父が亡くなり、父を単独相続した私が先方に共有持分についての登記への協力を求めたところ、20年以上経過しているので時効だといって応じてもらえません。私は移転登記を求めることはできますか。」
Dの相談:「私は他人にお金を貸し、その担保として債務者の所有する土地・建物に2番抵当権の設定を受けています。このたび、1番抵当権の被担保債権が消滅時効にかかったことがわかったのですが、私は、私の貸金債権の弁済期が到来していない現時点において、この事実を主張して、私の抵当権の順位を繰り上げてもらうことができますか。」
Eの相談:「叔父は7年ほど前に重度の認知症になり後見開始の審判を受けました。配偶者である叔母が後見人となっていたところ、今年2月10日にこの叔母が急逝し、同年6月10日に甥の私が後見人に選任されました。就任後調べたところ、叔父が以前に他人に貸し付けた300万円の債権が10年前の6月1日に弁済期を迎えた後、未回収のまま放置されていることを知り、あわてて本年6月20日に返済を求めましたが、先方はすでに時効期間が満了していることを理由に応じてくれません。この債権について返還を求めることができますか。」

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.Aの相談とBの相談

☓:2.Aの相談とCの相談

☓:3.Bの相談とDの相談

○:4.Cの相談とEの相談

☓:5.Dの相談とEの相談

解説

A.できません。
債務者の承認により、被担保債権に生じた消滅時効の中断の効力を物上保証人が否定することは、附従性に反するため、許されない(最判平成7年3月10日)。
したがって、Aは時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求することはできない。
なお、附従性とは、担保物権の成立、変更、消滅は、主たる債務(被担保債権)の成立、変更、消滅に従うという担保物権におけるその性質の一つのことである。
B.できません。
民法145条は、時効の援用権者は当事者である旨を規定しており、建物賃借人は、土地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから、建物賃貸人による敷地所有権の取得時効を援用することはできない(最判昭和44年7月15日)。
したがって、Bは賃貸人が敷地の土地を時効取得したと主張して立ち退きを拒否することはできない。
C.できます。
所有権は消滅時効にかからないことから(民法第167条2項)、所有権に基づく物権的請求権(物権的返還請求権、物権的妨害排除請求権、物権的妨害予防請求権)も同様に消滅時効によって消滅しないと解されている(大判大正11年8月21日、最判昭和51年11月5日など)。
また、民法第1042条では、遺留分権利者が、遺留分減殺請求権は相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間又は相続開始の時から十年で消滅するとしているが、本規定は遺留分減殺請求権自体の消滅時効を定めたものであり、遺留分権利者が減殺請求によって取り戻した物権的返還請求権(登記請求権・引渡請求権など)は消滅時効にはかからないとされる(最判昭和57年3月4日、最判平成7年6月9日)。
したがって、Cは移転登記を求めることができる。
D.できません。
民法145条の当事者として消滅時効を援用し得る者は、権利の消滅により直接利益を受ける者に限定されると解すべきであり、後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当するものではないため、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することはできない(最判平成11年10月21日)。
したがって、Dは、この事実を主張する(消滅時効を援用する)だけでは、抵当権の順位を繰り上げてもらうことはできない。
なお、順位を繰り上げてもらうには、1番抵当権者に順位変更の登記の合意を得て共同申請することになる。
E.できます。
時効の期間の満了前6箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない(民法第158条1項)。
また、債権は、10年間行使しないときは、消滅する(民法第167条1項)。
これらの規定を本肢にあてはめると、まず貸し付けた債権の時効の期間の満了日は6月1日となるが、後見人である叔母はその6箇月以内の2月10日に急逝しているので、新たにEが後見人として就任した6月10日から6箇月を経過するまでの間は、時効が完成しないことになる。
したがって、Eはこの債権について返還を求めることができる。


この問題の成績

  • まだ、データがありません。


  • 試験過去問題の使い方

    平成30年までの行政書士試験問題の過去問を掲載しています。

    問題の解答ボタンの順番が、毎回ランダムで移動するので正解番号を覚えてしまうことを防止できます

    過去問ドリル使い方

    法令、一般知識のほか、法令につては(基礎法学、憲法<総論、人権、統治、財政>、行政法<行政手続法行政指導、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法>、民法<総則、物件、担保物件、債権>、商法、会社法、)などジャンルから選択するか、試験出題年度を選択してください。

    問題文章の後に選択肢が表示されるので、文章をタッチして解答してください

    解答画面では、過去6ヶ月間の解答について、履歴を表示するとともに、ユーザー全体の正解率を表示します。


    過去問を使った学習のヒント

    行政書士試験の本番時間は、3時間(180分) 法令46問、一般知識14問の合計60問が出題されます。

    1問あたり3分180秒で解答すれば間に合う計算になります。しかし、実際には、記述はもちろん、多肢選択、一般知識の文章読解問題は長い問題文を読んでいるだけで3分以上かかる場合もあるので180秒より速く解答する必要があります

    重要!毎日三時間用意する

    1問あたり100秒で解く(おおよそ半分の時間で一周できます)

    じゃあ残った時間は何をするのか?→解答を見る前に必ず見直すようにしてください。(回答時に自信がある問題、ない問題の目印をつけておくなど)


    過去問ドリルに取り組む前に

    一通りテキストを読み込んでから取り組みましょう。

    どの年度でもいいので初回60問といて、94点未満以下の場合はもう一度テキストを読み込む作業に戻りましょう

    300点満点中の180点取れれば合格ですので、目安として94点以上であれば、本格的に過去問ドリルに取り組んでみてください。