行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成21年30問

民法債権

○:4.ウ・オ


問30 催告に関する次のア~オの各事例のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア、Aは成年被保佐人であるBとの間で、Bの所有する不動産を購入する契約を締結したが、後日Bが制限行為能力者であることを知った。Aは、1ヶ月以上の期間を定めて、Bに対し保佐人の追認を得るべき旨を催告したが、所定の期間を過ぎても追認を得た旨の通知がない。この場合、その行為は追認されたものとみなされる。
イ、CはDとの間で、C所有の自動車を、代金後払い、代金額150万円の約定でDに売却する契約を締結した。Cは自動車の引き渡しを完了したが、代金支払期日を経過してもDからの代金の支払いがない。そこでCはDに対して相当の期間を定めて代金を支払うよう催告したが、期日までに代金の支払いがない。この場合、C・D間の売買契約は法律上当然に効力を失う。
ウ、Eは知人FがGより100万円の融資を受けるにあたり、保証(単純保証)する旨を約した。弁済期後、GはいきなりEに対して保証債務の履行を求めてきたので、Eはまずは主たる債務者に催告するよう請求した。ところがGがFに催告したときにはFの資産状況が悪化しており、GはFから全額の弁済を受けることができなかった。この場合、EはGが直ちにFに催告していれば弁済を受けられた限度で保証債務の履行を免れることができる。
エ、Hは甲建物を抵当権の実行による競売により買い受けたが、甲建物には、抵当権設定後に従前の所有者より賃借したIが居住している。HはIに対し、相当の期間を定めて甲建物の賃料1ヶ月分以上の支払いを催告したが、期間経過後もIが賃料を支払わない場合には、Hは買受け後6ヶ月を経過した後、Iに対して建物の明け渡しを求めることができる。
オ、Jは、自己の所有する乙土地を、その死後、世話になった友人Kに無償で与える旨の内容を含む遺言書を作成した。Jの死後、遺言の内容が明らかになり、Jの相続人らはKに対して相当の期間を定めてこの遺贈を承認するか放棄するかを知らせて欲しいと催告したが、Kからは期間内に返答がない。この場合、Kは遺贈を承認したものとみなされる。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.ア・イ

☓:2.ア・ウ

☓:3.イ・エ

○:4.ウ・オ

☓:5.エ・オ

解説

ア.誤り。
制限行為能力者の相手方は、被保佐人に対して、一箇月以上の期間を定めてその保佐人に追認を得るべき旨の催告した場合、その被保佐人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす(民法第20条4項)。
したがって、本肢の場合、AB間の売買契約を「追認されたものとみなされる。」のではなく、取り消したものとみなされる。
イ.誤り。
CはDに対して相当の期間を定めて代金を支払うよう催告し、その期日までに代金の支払いがないのだから、履行遅滞等による契約の解除をすることができる(民法第541条)。あくまでも、Cは契約の解除をすることができるだけであり、解除しないで代金の支払いを待つことも可能である。
したがって、C・D間の売買契約は法律上当然に効力が失われるわけではない。
ウ.正しい。
保証人は、催告の抗弁権及び検索の抗弁権を有するが、これら権利について保証人の請求又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる(民法第455条)。
したがって、EはGが直ちにFに催告していれば弁済を受けられた限度で保証債務の履行を免れることができる。
催告の抗弁権債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、原則としてまず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。
検索の抗弁権保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
エ.誤り。
抵当権者に対抗することができない競売手続の開始前からの賃借人は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない(民法第395条1項1号)。ただし、当該規定は買受人の買受けの時より後にその建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用されない(同条第2項)。
したがって、Hは6ヶ月を経過してなくても、Iに対して建物の明け渡しを求めることができる。
なお、本肢の論点としてはこのような解説となるが、本肢を単純に家賃を支払ってない債務不履行の問題と捉えた場合、6ヶ月を経過した後、Iに対して建物の明け渡しを求めること自体は何ら問題なくできるため、本来は「6ヶ月を経過した後でなければ、Iに対して建物の明け渡しを求めることはできない。」→「誤り。」とすべきであろう。
オ.正しい。
遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる。この場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす(民法第987条)。
したがって、Kは遺贈を承認したものとみなされる。


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