解答 行政書士試験 平成21年34問
民法債権
○:2.責任能力を有する未成年者が不法行為をなした場合、親権者の未成年者に対して及ぼしうる影響力が限定的で、かつ親権者において未成年者が不法行為をなすことを予測し得る事情がないときには、親権者は、被害者に対して不法行為責任を負わない。
○:2.責任能力を有する未成年者が不法行為をなした場合、親権者の未成年者に対して及ぼしうる影響力が限定的で、かつ親権者において未成年者が不法行為をなすことを予測し得る事情がないときには、親権者は、被害者に対して不法行為責任を負わない。
問34
不法行為の成立に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.鍵が掛けられていた、他人の自転車を盗んだ者が、その自転車を運転している最中に不注意な運転により第三者に怪我を負わせてしまった場合、自転車の所有者は、第三者に対して不法行為責任を負う。
○:2.責任能力を有する未成年者が不法行為をなした場合、親権者の未成年者に対して及ぼしうる影響力が限定的で、かつ親権者において未成年者が不法行為をなすことを予測し得る事情がないときには、親権者は、被害者に対して不法行為責任を負わない。
☓:3.飲食店の店員が出前に自動車で行く途中で他の自動車の運転手と口論となり、ついには同人に暴力行為を働いてしまった場合には、事業の執行につき加えた損害に該当せず、店員の使用者は、使用者責任を負わない。
☓:4.請負人がその仕事について第三者に損害を与えてしまった場合、注文者と請負人の間には使用関係が認められるので、注文者は、原則として第三者に対して使用者責任を負う。
☓:5.借家の塀が倒れて通行人が怪我をした場合、塀の占有者である借家人は通行人に対して無過失責任を負うが、塀を直接占有していない所有者が責任を負うことはない。
解説
1.妥当でない。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(民法第709条)。本肢では、自転車の所有者に故意又は過失はないため、第三者に対して不法行為責任を負わない。
ところで、自動車の場合においては、窃盗された自動車で人身事故を起こされた場合、一定の要件の下に所有者が責任を負うことがある。これは、自賠法第3条で規定する運行供用者責任といわれるもので、例えば、鍵をかけずにエンジンをつけたまま駐車していた際に、盗難されて人身事故を起こされたとき等に適用の余地がでてくる責任である。
自転車においては、自動車における自賠法に代わる法はなく、また、自賠法が適用されることもないが、仮に当該規定に沿って考えたとしても、本肢では「鍵が掛けられていた」となっており、その他の事情も示されてないことを踏まえれば「不法行為責任を負う。」とはいえない。
2.妥当である。
未成年者が責任能力を有する場合であっても、両親等の監督義務者の義務違反があり、その義務違反と未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認められるときは、監督義務者に責任が生じる(最判昭和49年3月22日)。
一方で、親権者の未成年者に対して及ぼしうる影響力が限定的で、かつ親権者において未成年者が不法行為をなすことについて、具体的予見可能性が欠如しているときには、親権者は、被害者に対して不法行為責任を負わないとされている(最判平成18年2月24日)。
3.妥当でない。
暴力行為であってもそれが会社の事業の執行行為を契機とし、これと密接な関連を有すると認められる行為によって加えたものである場合、会社の事業の執行につき加えた損害に当たるというべきであるとされており(最判昭和44年11月18日)、すし屋の店員二名が、使用者所有の自動車を運転し、またはこれに同乗して、出前に行く途中、当該自動車の方向指示器を点燈したまま直進したため、これと衝突しそうになった他の自動車の運転者と口論になり、そのあげく同人に対し暴行を加えて負傷させた事案において、判例は、同人の被った損害は、事業の執行行為を契機とし、これと密接な関連を有すると認められる行為をすることによって生じたものであるから、民法七一五条一項にいう被用者が使用者の事業の執行につき加えた損害というべきであるとしている(最判昭和46年6月22日)。
したがって、本肢における店員の使用者は、使用者責任を負う。
4.妥当でない。
民法第716条では、「注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。」としており、原則として注文者は、その責任を負わない(大判昭和9年5月22日)。
なお、請負人(元請人)と下請人の関係(大判昭和9年5月22日)、元請人と孫請人(または下請人の被用者)の関係(最判昭和37年12月14日)については、指揮監督の関係が直接的又は間接的にその者に及んでいる場合には、元請人はその行為につき責任を負うとされている。
5.妥当でない。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない(民法第717条1項)。
したがって、借家の塀が倒れて通行人が怪我をした場合、借家人は損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは責任を負わず(無過失責任ではない)、所有者が責任を負う(無過失責任)。
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