行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成21年39問

商法会社法

○:4.ウ・エ


問39 株式会社の事業譲渡に関する次のア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア、事業譲渡を行う場合には、譲渡会社と譲受会社の間で、譲渡する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項を包括的に定めた事業譲渡契約を締結しなければならない。
イ、譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、譲受会社は、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負い、譲渡会社は当該債務を弁済する責任を免れる。
ウ、譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内およびこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。
エ、会社がその事業の全部または重要な一部の譲渡を行う場合には、譲渡会社において株主総会の特別決議による承認を要するが、譲渡する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の額の五分の一を超えないときは、株主総会の承認は不要である。
オ、会社が他の会社の事業の全部または重要な一部を譲り受ける場合には、譲受会社において株主総会の特別決議による承認を要するが、譲受会社が対価として交付する財産の帳簿価格の合計額が譲受会社の総資産の額の五分の一を超えないときは、株主総会の承認は不要である。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.ア・イ

☓:2.ア・オ

☓:3.イ・ウ

○:4.ウ・エ

☓:5.ウ・オ

解説

ア.妥当でない。
事業譲渡を行う場合には、譲渡会社は株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けないといけないため、事業譲渡契約の締結をすることは必要であるが(会社法第467条)、事業譲渡ではその契約で決められた財産等が個別に移転するため、 必ずしも譲渡する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項を包括的に定める必要はない。
なお、合併及び会社分割では、権利義務が包括的に承継等されるため、それらに関する事項を包括的に定めた契約を締結する必要がある(会社法758条2号、760条2号、763条5号、765条1項5号)。
イ.妥当でない。
譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、原則としてその譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う(会社法第22条1項)。
このように、商号を引き続き使用する場合は譲受会社と譲渡会社は共にその弁済責任を負い、原則として重畳的債務引受けがあったとみなされる。
したがって、譲渡会社は当該債務を弁済する責任を免れない。
なお、譲受会社は、本店の所在地に譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合又は第三者へその旨を通知をした場合のその第三者には免責される(会社法第22条2項)。
重畳的債務引受けとは?
重畳的(ちょうじょうてき)債務引受けとは、債務を引き受ける際に、債務を引き受ける側が、当初の債務者とともに連帯して同等の債務を負担するもので、併存的債務引受けや添加的債務引受けという呼び方もされる。
これに対して、当初の債務者が債務を負担しなくなる形態の債務引受けを免責的債務引受け(交替的債務引受け、免脱的債務引受け)という。
なお、重畳的債務引受けは、債権者の利害を損なうことはないので、当初の債務者と引受人との合意のみによっても成立するが(大判大正15年3月25日)、免責的債務引受けは、当初の債務者は弁済する責任が免除されるものであり、言わば債務者が変更することになり、資力や担保権などの点において債権者が不利益を被る恐れがあることから、債権者の合意ないし同意が必要となる(通説)。
ウ.妥当である。
会社法第21条は「譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区及び指定都市の区を含む)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。」とし、譲渡会社に競業禁止義務を課している。
なお、商法第16条でも商人について同趣旨の規定が置かれている。
エ.妥当である。
会社がその事業の全部の譲渡、または事業の重要な一部の譲渡を行う場合には、原則として、譲渡会社において、株主総会の特別決議による承認を要する。ただし、当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものは除かれる(会社法309条2項11号、467条1項1号・2号)。
簡単に言えば、譲渡する規模が小さい場合は、特別決議は必要ないということである。
オ.妥当でない。
他の会社の事業の全部の譲受けは、特別決議を要するが、重要な一部を譲り受ける場合には、株主総会決議は必要ない(会社法第467条1項1号~3号参照)。
なお、譲受会社が、取締役設置会社である場合は、取締役会決議は必要となる(会社法第362条4項1号)。また、事業の全部の譲受けにおいて、譲受会社が対価として交付する財産の帳簿価格の合計額が譲受会社の純資産の額の五分の一を超えないときは、原則として株主総会の承認は不要である(会社法第468条2項)。


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