行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成22年19問

行政法 国家賠償法

○:1.国家賠償を請求する訴訟は、民事訴訟であるから、その訴訟手続について行政事件訴訟法が適用されることはない。


問19

国家賠償請求訴訟に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

○:1.国家賠償を請求する訴訟は、民事訴訟であるから、その訴訟手続について行政事件訴訟法が適用されることはない。

☓:2.処分の違法を理由として国家賠償を請求する訴訟を提起するためには、事前に、当該処分についての取消判決により、その違法性を確定しておく必要がある。

☓:3.処分に対する取消訴訟の出訴期間が経過して、処分に不可争力が生じた場合には、その違法を理由として国家賠償を請求する訴訟を提起することはできない。

☓:4.処分に対する取消訴訟に当該処分の違法を理由とする国家賠償を請求する訴訟を併合して提起することは許されない。

☓:5.国家賠償を請求する訴訟の被告とされるのは国または地方公共団体に限られ、それ以外の団体が被告となることはない。

解説

1.正しい。
国家賠償請求権の性質について判例は、「国または公共団体が国家賠償法に基づき損害賠償責任を負う関係は、実質上、民法上の不法行為により損害を賠償すべき関係と性質を同じくするものであるから、国家賠償法に基づく普通地方公共団体に対する損害賠償請求権は、私法上の金銭債権であって、公法上の金銭債権ではな(い)」(最判昭和46年11月30日)としている。
また、学説においても、通説は、国家賠償法は、民法上の不法行為の特則であり、国家賠償請求権の性質は民法上の損害賠償請求権と同様に私権であるから(公権ではない)、国家賠償請求訴訟は、民事訴訟に属すると解しており、実務上も民事訴訟として扱われている。
そして、訴訟における審判の対象が私法関係であり、その訴訟の種類は民事訴訟であると解する以上は、その訴訟手続は、民事訴訟法及びその関連法によってなされることになり、本肢が述べるように「行政事件訴訟法が適用されることはない」となる。
なお、損失補償の請求は、行政事件訴訟とされており、公法上の当事者訴訟として、行政事件訴訟法が適用される点に注意されたい。
2.誤り。
「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではない」(最判昭和36年4月21日)。
3.誤り。
不可争力(形式的確定力と呼ぶこともある)とは、行政事件訴訟法における出訴期間や行政不服審査法における不服申立期間など法定の期間が経過すると、国民の側からはその行政行為の効力を争うことができなくなるという効力であるが、国家賠償請求訴訟は、処分の効力を争う訴訟ではないため、不可争力の影響は受けない(民法上の時効の規定は適用されるが、出訴期間の制限はない。)。
したがって、取消訴訟の出訴期間が経過しても、国家賠償請求訴訟を提起することができる。
なお、近時の判例では、課税処分に対し、過納金相当額を損害とする国家賠償請求のように、それが実質的に取消訴訟と同一の効果を生じさせる場合でも、同様に取消訴訟における出訴期間の制限は受けないとしている(最判平成22年6月3日)。
4.誤り。
本肢の「当該処分の違法を理由とする国家賠償を請求する訴訟」は、取消訴訟の関連請求にあたり(行政事件訴訟法第13条1号)、取消訴訟に、関連請求に係る訴えを併合することは許される(行政事件訴訟法第16条1項)。
なお、取消訴訟提起後に関連請求を付け加える追加的併合をすることも許されている(行政事件訴訟法第19条)。
5.誤り。
国家賠償法1条における「国又は公共団体」は、国又は地方公共団体に限られているわけではなく、弁護士会や特殊法人なども含まれると解されており、このような国又は地方公共団体に属しない団体の公権力の行使によって損害を被った場合は、当該団体を被告として国家賠償請求することが可能である。実際の最高裁判例としては、私法人である指定確認検査機関を被告とする取消訴訟において、行政事件訴訟法第21条の訴えの変更によって取消訴訟から国家賠償請求に変更することを認めたものがある(最決平成17年6月24日)。


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