解答 行政書士試験 平成22年6問
憲法
○:5.ウ・エ
○:5.ウ・エ
問6 次のア~エの記述のうち、租税法律主義を定める憲法84条についての最高裁判所の判例の考え方を示すものとして、正しいものの組合せはどれか。
ア、国または地方公共団体が、特別の給付に対する反対給付として徴収する金銭は、その形式を問わず、憲法84条に規定する租税に当たる。
イ、市町村が行う国民健康保険の保険料は、被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるから、憲法84条は直接適用される。
ウ、国民健康保険税は、目的税であって、反対給付として徴収されるものではあるが形式が税である以上は、憲法84条の規定が適用される。
エ、市町村が行う国民健康保険の保険料は、租税以外の公課ではあるが、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するので、憲法84条の趣旨が及ぶ。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.ア・イ
☓:2.ア・ウ
☓:3.イ・ウ
☓:4.イ・エ
○:5.ウ・エ
解説
ア.誤り。
「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税に当たるというべきである。」(旭川市国民健康保険料訴訟:最大判平成18年3月1日)
なお、本肢の「特別の給付に対する反対給付として徴収する金銭は、その形式を問わず、憲法84条に規定する租税に当たる」を「正しい」とした場合、必然的に肢2の国民保険料や肢3の国民健康保険税は、憲法84条にいう租税に当たることになり(=同規定が適用されることになる)、肢ア~肢ウは、いずれも「正しい。」となってしまうため、選択肢の組合せの観点から本肢は「誤り。」と判断することができる。
イ.誤り。
「市町村が行う国民健康保険の保険料は、これと異なり(肢ア解説部分)、被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものである。・・・中略・・・したがって、上記保険料に憲法84条の規定が直接に適用されることはないというべきである」(前掲最大判平成18年3月1日)
ウ.正しい。
市町村は、国民健康保険事業に要する費用に充てるために、世帯主から保険料を徴収するか(国民健康保険法第76条本文)、又は目的税(使途を特定して徴収される租税のこと)である国民健康保険税を課することになるところ(地方税法703条の4第1項)、国民健康保険税は、反対給付として徴収されるものであるが、目的税であって、形式が税である以上は、憲法84条の規定が適用される(前掲最大判平成18年3月1日)。
エ.正しい。
「租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては、憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきであるが、その場合であっても、租税以外の公課は、租税とその性質が共通する点や異なる点があり、また、賦課徴収の目的に応じて多種多様であるから、賦課要件が法律又は条例にどの程度明確に定められるべきかなどその規律の在り方については、当該公課の性質、賦課徴収の目的、その強制の度合い等を総合考慮して判断すべきものである。」(前掲最大判平成18年3月1日)
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