解答 行政書士試験 平成22年8問
憲法
○:2.中止命令の対象となった建築物が条例違反の建築物であることを公表する旨の定め。
○:2.中止命令の対象となった建築物が条例違反の建築物であることを公表する旨の定め。
問8
A市は、風俗営業のための建築物について、条例で独自の規制基準を設けることとし、当該基準に違反する建築物の建築工事については市長が中止命令を発しうることとした。この命令の実効性を担保するための手段を条例で定める場合、法令に照らし、疑義の余地なく設けることのできるものは、次の記述のうちどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.当該建築物の除却について、法律よりも簡易な手続で代執行を実施する旨の定め。
○:2.中止命令の対象となった建築物が条例違反の建築物であることを公表する旨の定め。
☓:3.中止命令を受けたにもかかわらず建築工事を続行する事業者に対して、工事を中止するまでの間、1日について5万円の過料を科す旨の定め。
☓:4.市の職員が当該建築物の敷地を封鎖して、建築資材の搬入を中止させる旨の定め。
☓:5.当該建築物により営業を行う事業者に対して1千万円以下の罰令を科す旨の定め。
解説
1.設けることはできない。
行政代執行法第1条では「行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。」としているため、個別の法律で簡易代執行を制定すること自体は許容されており、実際にも、河川法や道路法等で、違法放置物件に対する措置として、簡易代執行制度が定められている。
しかし、同法第2条では「法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により・・以下略・・・」としており、2条ではわざわざ条例を含むと言及されていることに照らすと、1条の「法律」には、条例は含まれないと解すべきとするのが通説である。
したがって、簡易代執行手続きの定めを条例で設けることはできない。
2.設けることができる。
義務の不履行又は行政指導に対し従わない場合にその事実を公に発表することを公表というところ、公表それ自体は、本来、情報公開制度の一環をなすものであるが、一方で、本肢のように実効性確保の役割や制裁的な役割を期待して設けたり、期待してなくても実質的にその側面を有していたりすることがある。
そうすると、肢1で説明したように、行政代執行法第1条によって、行政上の義務の履行確保に関しては条例で定められないとなりうるが、違反事実の公表の制度は、行政代執行法制定当時に想定されていなかった履行確保の手段であり、新たな義務履行確保の手段まで条例で制定できないとすると地方公共団体の自主的判断による法の執行余地を狭めてしまうことになるため、条例で公表の制度(他にも給付拒否など)を定めることは同法第1条で禁止されていないと解されている。
したがって、公表する旨の定めを条例で設けることはできる。
3.設けることはできない。
軽微な過去の違反に対する制裁目的にて科す過料は秩序罰として条例で設けることはできるが(地方自治法14条第3項)、本肢は「工事を中止するまでの間、1日について5万円の過料を科す」としており、秩序罰ではなく執行罰に該当するものであって、肢1及び肢2で説明の通り、古典的な行政上の義務の履行確保手段である執行罰は行政代執行法第1条により条例で設けることできない。
また、1日について5万円の過料を科すというのは、トータル的には何百万円、何千万円となりうるため、過料の上限を5万円としている地方自治法14条第3項にも違反することになる。
したがって、工事を中止するまでの間、1日について5万円の過料を科す旨の定めを条例で設けることはできない。
4.設けることはできない。
本肢の「敷地を封鎖して、建築資材の搬入を中止させる」というのは、直接強制にあたり、肢1及び肢2で説明の通り、古典的な行政上の義務の履行確保手段である直接強制は、行政代執行法第1条により条例で設けることができない。
したがって、敷地を封鎖して、建築資材の搬入を中止させる旨の定めを条例で設けることはできない。
5.設けることはできない。
地方自治法14条第3項は「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」としており、罰金の上限は100万円である。
したがって、1千万円以下の罰令を科す旨の定めを条例で設けることはできない。
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