解答 行政書士試験 平成23年24問
行政総論
○:4.私人所有の財産が公物として公用開始の対象に含まれていた場合、公用開始の効力は当該財産に関する部分について当然に無効となる。
○:4.私人所有の財産が公物として公用開始の対象に含まれていた場合、公用開始の効力は当該財産に関する部分について当然に無効となる。
問24
公物に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.自然公物については、自然のままにおいて公共の用に供されていると解されるので、公用開始という観念は成り立ちえない。
☓:2.公物の公用開始行為は、特定の私人を名あて人とするものではないが、行政法学でいう行政行為の一種である。
☓:3.公物の公用廃止については、明示的な廃止処分によることなく、黙示で廃止されたものとみなされることもある。
○:4.私人所有の財産が公物として公用開始の対象に含まれていた場合、公用開始の効力は当該財産に関する部分について当然に無効となる。
☓:5.公用開始後の公物の供用行為が利用者との関係で適正であっても、第三者に対して損害を及ぼせば、当該公物の管理者は損害賠償責任を負う。
解説
1.正しい。
人工公物のうち公共用物(直接公衆にも使用される公物)は、公衆の利用が可能となる時点を明確にする必要があることから、公用開始行為が行政処分として行われる。
これに対し、自然公物の場合は、自然のままにおいて公衆の利用に供されてきているため、公用開始という観念は成立せず、公用開始行為はなされない。
例えば、地震等の地殻変動により私有地が海底に埋没したため、海の一部になった場合は、なんら公用開始行為はなされずに公物となる。
なお、1級・2級河川の指定、海岸保全区域の指定は、既に公物であるものに対して特別の管理を行うためになされるもので、公用開始行為には当たらない。
2.正しい。
公物の公用開始行為の法的性格については争いもあるが、通説は、「公衆が当該公物を利用可能になること」「私権制限が開始又は強化されること」「私人の取得時効の起算点に関係しうること」などを理由に行政行為であると解している。
なお、公用廃止行為も同様に行政行為であると解されおり、こちらは下級審で市道の廃止行為についてそのように示した判例も存在する(福岡高那覇支判平成2年5月29日)。
3.正しい。
黙示的な公用廃止について判例は、公共用財産としての形態、機能を全く喪失するなど、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の成立を妨げないとしている(最判昭和51年12月24日)。
4.誤り。
公物を所有権の所在で分類した場合、以下に分類することができる。
【1】国有公物(国所有)
【2】公有公物(地方公共団体所有)
【3】私有公物(私人所有)
そして、【3】の私有公物が認められている以上、私人が所有している財産であっても、何らかの権原(賃借権等)を取得して公用開始した場合は、何ら問題は発生しない。
また、その権原なくして公用開始した場合であっても、判例(最判昭和44年12月4日)は、そのような供用開始は許されないとしているため、違法性を帯びることになるが、公用開始行為それ自体は土地の帰属に何ら効果を持たないことから、「公用開始の効力は当該財産に関する部分について当然に無効となる。」とはいえない。
5.正しい。
国営空港における航空機の騒音問題において、空港周辺住民の国家賠償請求に対し、判例は「営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りにおいてはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によって危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物の設置、管理には瑕疵があるというを妨げず、したがって、右営造物の設置・管理者において、かかる危険性があるにもかかわらず、これにつき特段の措置を講ずることなく、また、適切な制限を加えないままこれを利用に供し、その結果利用者又は第三者に対して現実に危害を生ぜしめたときは、それが右設置・管理者の予測しえない事由によるものでない限り、国家賠償法二条一項の規定による責任を免れることができない」として、国の賠償責任を認めている(最大判昭和56年12月16日)。
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