解答 行政書士試験 平成23年25問
行政総論
○:2.[ア]職務に専念すべき [イ]給与支払 [ウ]安全配慮 [エ]特別な社会的接触
○:2.[ア]職務に専念すべき [イ]給与支払 [ウ]安全配慮 [エ]特別な社会的接触
問25 次の文章は、公務員に対する国の損害賠償責任の成立が争点となった事案の最高裁判所判決の一節である。空欄[ア]~[エ]に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか。
思うに、国と国家公務員…との間における主要な義務として、法(国家公務員法、自衛隊法)は、公務員が[ア]義務…並びに法令及び上司の命令に従うべき義務…を負い、国がこれに対応して公務員に対し[イ]義務…を負うことを定めているが、国の義務は右の…義務にとどまらず、国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたつて、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務…を負つているものと解すべきである。(中略)右のような[ウ]義務は、ある法律関係に基づいて[エ]の関係に入つた当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであつて、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はなく、(後略)。
(最三小判昭和50年2月25日民集29巻2号143頁以下)
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.[ア]品位を保持する [イ]身分保障 [ウ]危険防止 [エ]特別な社会的接触
○:2.[ア]職務に専念すべき [イ]給与支払 [ウ]安全配慮 [エ]特別な社会的接触
☓:3.[ア]職務に専念すべき [イ]身分保障 [ウ]安全配慮 [エ]特別な権力
☓:4.[ア]品位を保持する [イ]給与支払 [ウ]安全配慮 [エ]特別な権力
☓:5.[ア]職務に専念すべき [イ]給与支払 [ウ]危険防止 [エ]特別な権力
解説
ア.職務に専念すべき(義務)
職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない(国家公務員法第101条1項)。
イ.給与支払(義務)
職員の給与は、その官職の職務と責任に応じてこれをなす(国家公務員法第62条)。
なお、給与の細かい規定は、一般職員の場合は、一般職の職員の給与に関する法律で定められており、本判例の原告である自衛隊職員の場合は、防衛省の職員の給与等に関する法律で定められている。
ウ.安全配慮(義務) エ.特別な社会的接触
本判決の事案は、自動車整備作業中に車両に轢かれて死亡した自衛隊員Aの遺族が原告となって、自賠法第3条に基づいて国を訴えた事件であるが、第一審は、事故発生から3年以上経過しており、時効が完成していることを理由に請求は棄却された。
そこで、原告は第二審で、Aと被告国との雇用関係に着目し、安全配慮義務違反である旨の主張を追加した。
これは、本事故を不法行為債権(時効3年)ではなく、雇用契約上の債務不履行(時効10年)として構成することによって時効の壁の回避を狙ったものであるが、第二審は、特別権力関係の理論により、国に債務不履行責任はないと判断し、控訴を棄却した。
これに対し、最高裁は「安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであって、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はな(い)」とした上で、原告が主張した構成を認めて、控訴審判決を破棄して差し戻した。
なお、「特別権力関係の理論」とは、公権力と特殊な関係にある者は(在監者や公務員など)、特別な人権制限が許され(=法治主義の原則は廃除される)、その内部の行為は原則として司法審査の対象にならないという理論で、旧憲法では通説的な考え方であったが、現在の憲法における「法の支配」「基本的人権の尊重」などの下では、妥当しえないとの批判を受け、現在では過去の理論として扱われつつある。
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