解答 行政書士試験 平成23年28問
民法総則
○:3.Aから丙土地を購入したBが、その引渡しを受けてから10年以上が経過した後に隠れた瑕疵を発見し、Aに対して瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求した場合、Aは消滅時効を援用してこれを拒むことができる。
○:3.Aから丙土地を購入したBが、その引渡しを受けてから10年以上が経過した後に隠れた瑕疵を発見し、Aに対して瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求した場合、Aは消滅時効を援用してこれを拒むことができる。
問28
時効等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.A所有の甲土地につき、20年間占有を継続してきたBが取得時効を援用した場合、取得時効の成立を否定するためには、Aの側において、他主占有事情の立証では足りず、Bの占有が賃貸借など他主占有権原に基づいて開始された旨を立証しなければならない。
☓:2.A所有の乙土地につき、Bが5年間占有した後にCがこれを相続して、さらに10年間占有を継続した時点において、CがBの占有と併合して取得時効を援用した場合、C自身が占有開始時に悪意であったときは、Bが占有開始時に善意であり、かつ無過失であったとしても時効取得は認められない。
○:3.Aから丙土地を購入したBが、その引渡しを受けてから10年以上が経過した後に隠れた瑕疵を発見し、Aに対して瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求した場合、Aは消滅時効を援用してこれを拒むことができる。
☓:4.Aから甲建物を購入したBが、同建物の隠れた瑕疵を理由としてAに対して損害賠償を請求する場合には、瑕疵を発見してから1年以内にAに対して瑕疵の内容を具体的に明示しなくても、その存在を通知すれば、同請求権は時効により消滅することはない。
☓:5.乙建物について先順位抵当権者Aの被担保債権につき消滅時効が完成した場合、かかる債権の消滅により後順位抵当権者Bは順位上昇の利益を享受することができるため、Bもその時効を援用することができる。
解説
1.妥当でない。
「占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、・・・中略・・・外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず、その所有の意思を否定し、時効による所有権取得の主張を排斥しなければならないものである。」(最判昭和58年3月24日)
したがって、本肢のように「~では足らず、~も」ではなく、「~または~」を立証すれば、良いことになる。
2.妥当でない。
民法第187条1項は「占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。」と規定している。
本肢では、Bの占有はCに対し相続により承継されているが、相続の場合もこの規定の適用がある。
また、前主の占有を併せて主張した場合は瑕疵も承継するが(民法第187条2項)、瑕疵がなければその状態を承継すると考えられている(最判昭和53年3月6日)。
本肢ではBが善意・無過失であるから10年で取得時効が完成し(民法第162条2項)、Cが悪意であってもBの善意・無過失を承継しBの占有と併せると15年となり、時効取得が認められる。
3.妥当である。
「瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行すると解するのが相当である」(最判平成13年11月27日)
したがって、本肢の損害賠償請求権は目的物の引渡しから10年で消滅しており(民法第167条1項)、消滅時効を援用してこれを拒むことができる。
4.妥当でない。
「損害賠償請求権を保存するには、少なくとも、売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある。」(最判平成4年10月20日)
したがって、本肢の「瑕疵の内容を具体的に明示しなくても」という記述は妥当ではない。
5.妥当でない。
「後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅により直接利益を受ける者に該当するものではなく、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができないものと解するのが相当である」(最判平成11年10月21日)
したがって、後順位抵当権者にも時効援用権があるとする記述は誤っている。
なお、本肢の前半の記述である先順位抵当権者の被担保債権につき消滅時効が完成した場合、かかる債権の消滅により後順位抵当権者の順位が上昇するとする点は正しい。これを「順位上昇の原則」という。
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