行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成23年29問

民法物権

○:2.ア・イ・ウ


問29 A所有のカメラをBが処分権限なしに占有していたところ、CがBに所有権があると誤信し、かつ、そのように信じたことに過失なくBから同カメラを買い受けた。この場合に関する次のア~エの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものをすべて挙げた組合せはどれか。

ア、CがAのカメラを即時取得するのは、Bの占有に公信力が認められるからであり、その結果、Bがカメラの所有者であったとして扱われるので、Cの所有権はBから承継取得したものである。
イ、Cは、カメラの占有を平穏、公然、善意、無過失で始めたときにカメラの所有権を即時取得するが、その要件としての平穏、公然、善意は推定されるのに対して、無過失は推定されないので、Cは無過失の占有であることを自ら立証しなければならない。
ウ、Bは、Cにカメラを売却し、以後Cのために占有する旨の意思表示をし、引き続きカメラを所持していた場合、Cは、一応即時取得によりカメラの所有権を取得するが、現実の引渡しを受けるまでは、その所有権の取得は確定的ではなく、後に現実の引渡しを受けることによって確定的に所有権を取得する。
エ、Bは、Cにカメラを売却する前にカメラをDに寄託していたが、その後、BがCにカメラを売却するに際し、Dに対して以後Cのためにカメラを占有することを命じ、Cがこれを承諾したときは、たとえDがこれを承諾しなくても、Cは即時取得によりカメラの所有権を取得する。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.ア・イ

○:2.ア・イ・ウ

☓:3.ア・ウ・エ

☓:4.イ・ウ・エ

☓:5.ウ・エ

解説

ア.妥当でない。
即時取得(民法第192条)は、譲渡人の所有権に基づいて取得するものではないため、本肢のように「承継取得」ではなく、いわゆる「原始取得」である。
したがって、本問カメラはAからCが承継取得したのではなく、Cが原始取得したのである。
なお、動産取引については本肢のように「公信力」が認められている。
ここでの公信力は「占有あるところに所有権あり」ということを信じた者には信じた通りの効力を与える制度である。
イ.妥当でない。
前半は正しい。しかし、後半について判例は「およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法第188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」(最判昭和41年6月9日)と判示し、無過失の推定を受けるものとされている。
したがって、Cは無過失の占有であることを自ら立証する必要はない。
ウ.妥当でない。
本肢のように「売却した後も引き続き占有を続ける」ことを「占有改定」という(民法第183条)。
また、占有改定の即時取得について判例は「(即時取得は)いわゆる占有改定の方法による取得をもっては足らないものといわなければならない。」(最判昭和35年2月11日)と判示している。
これは、無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法第192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、占有改定は、かかる状態に一般外観上変更を来たさない、からである。
したがって、「一応即時取得する」とする本肢は誤っている。
エ.妥当である。
本肢のような占有移転の方法を「指図による占有移転」という(民法第184条)。
民法第184条は「代理人(D)によって占有をする場合において、本人(B)がその代理人(D)に対して以後第三者(C)のためにその物を占有することを命じ、その第三者(C)がこれを承諾したときは、その第三者(C)は、占有権を取得する」と規定しており、代理人(D)の承諾は要件としていない。
Cにしてみれば、Dに寄託したままで購入しようとするのだからその承諾は必要であるが、Dは誰が所有者となろうが、その人のために占有することが要求されるのである(最判昭和57年9月7日)。
したがって、Dが承諾しなくても、Cは即時取得によりカメラの所有権を取得する。


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