解答 行政書士試験 平成23年31問
民法債権
○:1.ア・イ
○:1.ア・イ
問31 連帯債務および連帯保証に関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア、連帯債務において、連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合には、その連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者は相殺を援用することができる。これに対し、連帯保証において、主たる債務者が債権者に対して債権を有する場合には、連帯保証人は、主たる債務者が債権者に対して有する債権による相殺をもって、相殺適状にあった全額について債権者に対抗することができる。
イ、連帯債務において、債権者が連帯債務者の1人に対して債務を免除した場合には、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者は債務を免れる。これに対し、連帯保証において、債権者が連帯保証人に対して債務を免除した場合には、主たる債務者はその債務の全額について免れることはない。
ウ、連帯債務において、連帯債務者の1人のために消滅時効が完成した場合には、他の連帯債務者はこれを援用して時効が完成した債務の全額について自己の債務を免れることができる。これに対し、連帯保証において、連帯保証人のために時効が完成した場合には、主たる債務者はこれを援用して債務を免れることはできない。
エ、連帯債務において、債権者が連帯債務者の1人に対してした債務の履行の請求は、他の債務者にも効力を生じる。
これに対し、連帯保証において、債権者が連帯保証人に対してした債務の履行の請求は、主たる債務者に対して効力が生じることはなく、主たる債務の時効は中断しない。
オ、連帯債務において、連帯債務者の1人が債務の全額を弁済した場合には、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償することができる。これに対し、連帯保証において、連帯保証人の1人が債務の全額を弁済した場合には、その連帯保証人は、他の連帯保証人に対し、求償することはできない。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
○:1.ア・イ
☓:2.イ・エ
☓:3.イ・オ
☓:4.ウ・エ
☓:5.ウ・オ
解説
ア.正しい。
連帯債務においては、債権者に反対債権を有しない連帯債務者は、「その連帯債務者の負担部分だけ」相殺をすることができる(民法第436条2項)。
それに対して、連帯保証人においては、連帯保証人は、「主たる債務者の有する債権」について相殺を援用することができる(民法第457条2項)。これは、連帯債務の場合、全額の相殺を許せば、反対債権を有する者が、反対債権を有しない者に対する求償により問題が解決されることになることを憂慮したためである。
それに対し、連帯保証人の場合は、主たる債務者に全額の負担がある。
イ.正しい。
連帯債務の場合は、免除は負担額について絶対的効力を有している(民法第437条)。すなわち、他の連帯債務者は、連帯債務者の1人に対する免除があれば、その免除を受けた連帯債務者の負担部分の債務を免れる。
それに対して、連帯保証人には負担部分がないからそれを前提とした規定は準用されず(民法第458条が民法第437条を準用するが、負担部分を前提としたものは準用されない)、本肢のようになる。
ウ.誤り。
後半は正しいが、前半は誤っている。すなわち、民法439条は「連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の『負担部分』については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。」と規定しているが、本肢では「全額」とされている。
それに対し、連帯保証人には負担部分がないからそれを前提とした規定は準用されず(民法第458条が民法第439条を準用するが、負担部分を前提としたものは準用されない)、本肢のようになる。
エ.誤り。
前半は正しいが、後半は誤っている。すなわち、連帯債務において請求は全額について絶対的効力があり、連帯債務者の1人に対する請求は他の連帯債務者にも効力を生じる(民法第434条)。
連帯保証の場合も請求は絶対的効力を有し、連帯保証人に対する請求は主たる債務者に対して効力を生じることになる(民法第458条が民法第434条を準用している)。
そして、請求は時効中断事由であり(民法第147条1号)、主たる債務の時効を中断することになる。
オ.誤り。
前半は正しいが、後半は誤っている。すなわち、連帯債務において、「弁済」は絶対的効力の1つであり(民法第432条1項)、連帯債務者の1人が全額を債務の全額を弁済した場合には、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償することができる。
連帯保証の場合、数人の連帯保証人がいる場合は、連帯保証人の1人が全額を弁済した場合には、他の連帯保証人に対し求償することができる(民法第465条1項、442条)。
なお、債権者に対する関係では、負担部分は存在しないが、連帯保証人間の内部関係では、各連帯保証人には負担部分が存在するので、全額の弁済でなくても自己の負担部分を超える弁済があればやはり求償することができる。
この問題の成績
まだ、データがありません。