解答 行政書士試験 平成23年34問
民法債権
○:5.ウ・エ
○:5.ウ・エ
問34 次のア~エの記述は、木造建物建築工事についての発注者Aと受注者Bとの間で締結された請負契約の約定の一部である。このうち、約定の内容が、民法の規定の内容と異なるもの、または民法に規定されていないものの組合せとして妥当なものはどれか。
ア、Aの請負代金の支払いは、Bの本契約の目的物の引渡しと同時になされるものとする。
イ、Aは、本契約の目的物に瑕疵があるときは、その瑕疵の補修(修補)に代え、または補修(修補)とともに、瑕疵に基づく損害賠償をBに求めることができる。
ウ、工事の遅延が、不可抗力によるとき、または正当な理由があるときは、Bは、速やかにその事由を示して、Aに工期の延長を求めることができる。
エ、Bの責めに帰すことができない工事の遅延または中止があるときは、Bは、この契約を解除することができる。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
☓:1.ア・イ
☓:2.ア・エ
☓:3.イ・ウ
☓:4.イ・エ
○:5.ウ・エ
解説
ア.民法に規定されている。
民法第533条は「双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない」と同時履行の抗弁権について規定している。
このように規定しているのは、双務契約では一方の先履行を許すと公平が保たれないからである。
また、これを受けて請負について民法第633条本文は「報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。」と規定している。
なお、民法第633条ただし書は「ただし、物の引渡しを要しないときは、第624条1項の規定を準用する」とし、報酬の後払いを規定している。
イ.民法に規定されている。
民法第634条2項前段は「注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる」と規定している。
瑕疵の修補とともに損害賠償請求もできるのは、例えば、修補期間中は請負人に預ける必要があるが、その間、誰かからそれと同じような物を借りなければならず、借賃が発生することも考えられるからである。
このように、修補請求をすれば損害がないというわけではない点に注意。
ウ.民法に規定されていない。
工期の延長の請求権(仕事を完成させる期間の延長の請求権)については、民法に規定されていない。
なお、建設工事請負契約は、紛争が生じやすく民法の請負契約の規定では不十分であることから、その特別法として、建設業法に一般規定が置かれており(建設業法第3章)、加えて中央建設業審議会が当事者間の具体的な権利義務の内容を定める標準請負契約約款を作成し、その実施を当事者に勧告することになっているが(建設業法第34条2項)、本肢の定めは、当該標準請負契約約款に存在している。
エ. 民法に規定されていない。
民法上において請負人(受注者B)が、契約解除できるのは、注文者が破産手続開始の決定を受けたときだけである(民法第642条)。
したがって、本肢の事由による請負人の契約解除権は民法に規定されていない。
なお、肢ウで説明の標準請負契約約款(公共工事用)には、本肢と類似する受注者の契約解除権の規定が設けられている。
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