解答 行政書士試験 平成23年41問
憲法
問41 次の文章の空欄[ア]~[エ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。
ある主張や意見を社会に伝達する自由を保障する場合に、その表現の[ア:場]を確保することが重要な意味をもっている。特に表現の自由の行使が行動を伴うときには表現の[ア:場]が必要となってくる。表現の[ア:場]が提供されないときには、多くの意見は受け手に伝達することができないといってもよい。[イ:一般公衆]が自由に出入りできる[ア:場]は、それぞれその本来の利用目的を備えているが、それは同時に表現の[ア:場]として役立つことが少なくない。道路、公園、広場などは、その例である。これを[ウ:パブリック・フォーラム]と呼ぶことができよう。この[ウ:パブリック・フォーラム]が表現の[ア:場]として用いられるときには、[エ:管理権]に基づく制約を受けざるをえないとしても、その機能にかんがみ、表現の自由の保障を可能な限り配慮する必要があると考えられる。 もとより、道路のような公共用物と、[イ:一般公衆]が自由に出入りすることのできる[ア:場]とはいえ、私的な[エ:管理権]に服するところとは、性質に差異があり、同一に論ずることはできない。しかし、後者にあっても、[ウ:パブリック・フォーラム]たる性質を帯有するときには、表現の自由の保障を無視することができないのであり、その場合には、それぞれの具体的状況に応じて、表現の自由と[エ:管理権]とをどのように調整するかを判断すべきこととなり、前述の較量の結果、表現行為を規制することが表現の自由の保障に照らして是認できないとされる場合がありうるのである。 (最三小判昭和59年12月18日刑集38巻12号3026頁以下に付された伊藤正己裁判官の補足意見をもとに作成した)
1、手段 ,2、とらわれの聴衆 ,3、ガバメント・スピーチ ,4、時間 ,5、一般公衆 ,6、プライバシー ,7、公共の福祉 ,8、敵対的聴衆 ,9、フェア・コメント ,10、デモ参加者 ,11、パブリック・フォーラム ,12、内容 ,13、警察官 ,14、思想の自由市場 ,15、方法論 ,16、管理権 ,17、権力関係 ,18、社会的権力 ,19、場 ,20、現実的悪意の法理
解説
ア.場。
始めのいくつかの[ア]には、「手段」や「方法論」でも文章が通るが、「自由に出入り(することの)できる[ア]」というところで、「場」が入ると判断できる。
イ.一般公衆。
「多くの受け手に伝達することができない」「自由に出入りできる」というところから、「デモ参加者」「一般公衆」に絞ることができ、また、ウが埋まっていれば、パブリック(公の、 公共、公衆)と「一般公衆」を結びつけることができるし、エが埋まっていれば、私的な管理権に服するところにデモ参加者が自由に出入りすることができるのはおかしいため、「一般公衆」が入ると判断することができる。
ウ.パブリック・フォーラム。
パブリック・フォーラムとは、直接和訳すると「公共の広場」という意味である。
パブリック・フォーラムという用語自体を知らなかったとしても意見公募手続(パブリックコメント)、スタジアムのスクリーンによるスポーツ観戦(パブリックビューイング)、東京国際フォーラム(展示場などに使われる東京を代表する大型施設)などを頭に描ければ、パブリック(公の、 公共、公衆)・フォーラム(広場、集会所)と「道路、公園、広場などは、」を結び付けることができよう。
なお、当該補足意見の考え方、すなわち所有権やその本来の利用目的のための管理権に基づく制限を受けざるを得ないとしても、憲法21条の保障する集会の自由に可能な限り配慮する必要があるとする考え方は、パブリック・フォーラム論と呼ばれている。
エ.管理権。
一つ目及び二つ目の[エ]で、「[エ]に基づく制約」「私的な[エ]に服する」となっているため、入りうるものは「管理権」「権力関係」「社会的権力」に絞られる。
また、三つ目の[エ]で、表現の自由と調整・較量されうるものと考えた場合、「管理権」がもっとも適当であると判断することができる。
なお、本問の伊藤正己裁判官の補足意見は、駅構内で退去要求を無視してビラ配りを続けた被告に住居侵入罪及び鉄道営業法の罰則を適用しても憲法21条1項に違反しないとする法廷意見に付されたものであり、本事案における「私的な管理権」は、鉄道会社の駅構内の管理権のこととなる。
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