行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成23年6問

憲法

○:4.議員は議会で自己の信念のみに基づいて発言・表決すべきであり、選挙区など特定の選出母体の訓令に法的に拘束されない、との原則は、自由委任の原則と呼ばれる。


問6

憲法43条1項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」、と定める。この「全国民の代表」に関わる次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.これと同様の定式は近代憲法に広く見られ、大日本帝国憲法でも採用されている。

☓:2.この定式は、近代の国民代表議会の成立に伴い、国民とその代表者との政治的意思の一致を法的に確保する目的で、命令委任の制度とともに導入されたものである。

☓:3.政党は国民の中の一党派であり、全国民を代表するものではないため、議員が政党の党議拘束に服することは、憲法上許されないものとされている。

○:4.議員は議会で自己の信念のみに基づいて発言・表決すべきであり、選挙区など特定の選出母体の訓令に法的に拘束されない、との原則は、自由委任の原則と呼ばれる。

☓:5.選挙は現代では政党間の選択としての意味を持つため、現行法上、議員は所属政党から離脱した時は自動的に議員としての資格を失うものとされている。

解説

1.妥当でない。
議会及び議員が「全国民の代表」という考え方は、近代憲法に広くみられるが、大日本国帝国憲法では、貴族院及び衆議院の組織する規定(大日本国帝国憲法第34条、35条)に「全国民の代表」との文言は入っておらず、このような定式は採用されていない。
これは、明治憲法下における帝国議会は、天皇に属し、天皇の立法権行使に対する協賛機関という位置付けであったことに加え、貴族院は皇族華族等によって組織されていたため、そのような定式は採用しえなかったことによる。
2.妥当でない。
「全国民の代表」における「代表」の捉え方としては、議員自らの固有の独立した意思を持たず、選挙民の手足となってその意思を忠実に反映・実行するという命令委任と、国会議員に対する選挙区からの拘束を否定し、独立に政治的意思を形成し国民全体のために政治に関与するという自由委任とがある。
歴史的変遷としては、命令委任の考え方は欧州の中世身分制議会において生まれたもので、「自由委任」の考え方は、中世身分制議会から近代的議会への発展のなかで、とりわけ17世紀イギリスにおいて生まれたものである。
そして、憲法第43条1項の「全国民の代表」も、自由委任の意味であると解されている。
したがって、「この定式は、近代の国民代表議会の成立に伴い、・・・命令委任の制度と共に導入された」とするのは誤りである。
3.妥当でない。
党議拘束とは、議案の賛否についてあらかじめ決めた政党の方針に、党議員の議員活動が拘束されることをいう。
この点、議員は全国民を代表するのに政党の意向に拘束されるのが憲法上許されるのかという問題が起きうるが、通説は、党議拘束は、政治的な責任の問題が生じるにすぎず、むしろ民意の反映に不可欠な存在であることなどを理由に「許される」と解している。
したがって、「憲法上許されない」とする本肢は誤りである。
なお、政党の拘束をあまりに強い形で制度化(所属政党から除名された場合、議員の身分を失うなど)した場合は、憲法第43条との抵触がおきるとされる。
4.妥当である。
「全国民の代表」の意味の通説は、国会は、それを構成する議員が特に選挙によって選ばれるということによって、民意を忠実に反映するべき機関であり、議会を構成する議員は、選挙区などの選挙母体の代表ではなく、全国民の代表であり、議員は議会において自己の信念のみに基づいて発言・評決し、選挙母体の訓令には拘束されないこと(自由委任の原則)を意味するとされる(政治的代表)。
5.妥当でない。
比例代表選出議員が当選後、当選時の所属政党以外の政党に所属することとなったときは、失職することになっているが(公職選挙法第99条の2、国会法109の2)、現行法上は、単に離脱しただけでは議員としての資格は失われない。
また、肢3で説明したように、所属政党から離脱した場合に、自動的に議員としての資格を失うなど政党の拘束をあまりに強い形で制度化した場合は、党の支持者の利害の観点からしか行動がなし得なくなるという点で、憲法第43条が議員は「全国民の代表」としていることとの抵触がおきると解されている


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