行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成24年1問

基礎法学

○:2.英米法系の国では、判決のうち、結論を導く上で必要な部分を「主文(レイシオ・デシデンダイ)」、他の部分を「判決理由」と呼び、後者には判例法としての拘束力を認めない。


問1

「判例」に関する次の記述のうち、明らかに誤っているものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.判例は、一般的見解によれば、英米法系の国では後の事件に対して法的な拘束力を有する法源とされてきたが、大陸法系の国では法源とはされてこなかった。

○:2.英米法系の国では、判決のうち、結論を導く上で必要な部分を「主文(レイシオ・デシデンダイ)」、他の部分を「判決理由」と呼び、後者には判例法としての拘束力を認めない。

☓:3.判例という語は、広義では過去の裁判例を広く指す意味でも用いられ、この意味での判例に含まれる一般的説示が時として後の判決や立法に大きな影響を与えることがある。

☓:4.下級審が最高裁判所の判例に反する判決を下した場合、最高裁判所は申立てに対して上告審として事件を受理することができる。

☓:5.最高裁判所が、法令の解釈適用に関して、自らの過去の判例を変更する際には、大法廷を開く必要がある。

解説

1.正しい。
英米法系の諸国では、英国の古来の慣習から発展した判例が主要な法源となっている。
これに対して、大陸法系の諸国では、ローマ法および教会法の影響を受けて、近代以降に民法典や刑法典等の成文法が整備され、それらの成文法が主要な法源である。
もっとも、今日では、英米法諸国でも補完的に成文法を法源にしたり、大陸法諸国でも補完的に判例法を法源にしたりすることはある。
なお、日本は、敗戦でアメリカ法の影響を強く受けたため、英米法的な要素も色濃くもっているが、大陸法に属しており、成文法が主要の法源で、慣習法と判例法がその補完的役割を担っている。
2.誤り。
判例法を中心とする英米法における判決では、判決理由を「判決の核心部分(レイシオ・デシデンダイ)」と「それ以外の部分(オビタ・ディクタム)」に分ける。
そして、前者は判例法としての法的拘束力を有するのに対し、後者は、判例法としての法的拘束力を有さない。
また、英米法では、単に「判決理由」とした場合、「判決の核心部分(レイシオ・デシデンダイ)」を指すこともある。
したがって、本肢は、『判決のうち、結論を導く上で必要な部分を「主文(レイシオ・デシデンダイ)」、他の部分を「判決理由」と呼び』としている点が誤っている。
なお、この区分けを日本の判決にもあてはめて、「オビタ・ディクタム」を傍論という呼び方をして区分けすることがある。
3.正しい。
判例の意味を狭く考えるならば、後の裁判にも適用されることになる最高裁判所判決の核心部分となる。
しかし、通常は、傍論も含めた最高裁判所判決の意味で用いられ、また、広義には、下級審の裁判例も含めて用いられることもある。
そして、この通常ないし広義の判例の説示も、後の判決や立法に大きな影響を与えることは当然にある。
例えば、憲法の有名判例である朝日訴訟(最大判昭和42年5月24日)では、上告人が死亡して訴訟の終了を宣言した判決文で「なお、念のために、・・・当裁判所の意見を付加する。」(つまり、傍論)として、生存権の法的性格を示しているが、この説示が後の判決に影響を与えているのは、明らかである。
また、下級審裁判例でも、プライバシー権を示した宴のあと事件(東京地判昭和39年9月28日)は、いまだ引用される裁判例の一つである。
4.正しい。
我が国の裁判制度は、3審制であるが、必ずしも事件内容について3度審理を受けられるわけではなく、特に通常3度目の審理にあたる上告審では、上告理由及び上告受理申立て事由がないと認めてもらえないという制限がかかる。
そして、その認めてもらえる理由及び事由として、憲法違反がある場合(刑事訴訟法第405条1号、民事訴訟法第312条1項)や最高裁判所の判例と相反する判断をした場合(刑事訴訟法第405条2号、民事訴訟法第318条1項)などがある。
5.正しい。
最高裁が大法廷で事件を扱わなければならないのは①「新しい憲法判断する場合」、②「憲法違反判決する場合」、③「判例変更する場合」の3つである(裁判所法第10条)。
なお、③につき、条文は「憲法その他の法令の解釈に関して、意見が前に最高裁判所のした裁判と異なるときは、大法廷で行わなければならない。」(裁判所法第10条3号)としているため、大審院のした裁判と異なるときは、小法廷で裁判を行うことができる。


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