行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成24年21問

地方自治法

○:2.A市の法定受託事務に関する国の関与が違法であると認めるときは、国地方係争処理委員会は、当該関与を行った国の行政庁に対して、理由を付し、期間を示した上で、必要な措置を講ずべきことを勧告することになる。


問21

国とA市との間の紛争に関する次の記述のうち、法令または判例に照らし、正しいものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.A市長は、自治事務に関する国の関与に不服があるときは、地方裁判所に対し、当該関与を行った国の行政庁を被告として、その取消しを求める抗告訴訟を提起することができる。

○:2.A市の法定受託事務に関する国の関与が違法であると認めるときは、国地方係争処理委員会は、当該関与を行った国の行政庁に対して、理由を付し、期間を示した上で、必要な措置を講ずべきことを勧告することになる。

☓:3.国の所有地内にあるA市の物件の撤去を国が求める場合、担当大臣は、A市長に対して地方自治法所定の国の関与としての代執行の手続をとることになる。

☓:4.A市情報公開条例に基づき、A市長が国の建築物の建築確認文書について公開する旨の決定をした場合、当該決定について不服を有する国がこの決定に対して取消訴訟を提起しても、当該訴訟は法律上の争訟に該当しないとして却下されることになる。

☓:5.A市に対する国の補助金交付の決定について、それが少額であるとしてA市が不服をもっている場合、A市が救済を求める際の訴訟上の手段としては、地方自治法に機関訴訟が法定されている。

解説

1.誤り。
A市長は、自治事務に関する国の関与に不服があるときは、高等裁判所に対し、当該関与を行った国の行政庁を被告として(行政庁がないときは国を被告として)、その取消しを求める機関訴訟を提起することができる(地方自治法第251条の5第1項、3項、行政事件訴訟法第6条)。
なお、国の関与を争う訴訟を提起するには、国地方係争処理委員会の審査の申出を前置しなければならない。
2.正しい。
国地方係争処理委員会は、普通地方公共団体の長その他の執行機関から、その担任する事務に関する国の一定の関与に不服があるとして審査の申出があった場合、それが違法・不当にあたらないときは、理由を付してその旨を当該審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び当該国の行政庁に通知するとともに、これを公表する。
一方、違法又は不当と認めるときは、当該国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を当該普通地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、これを公表しなければならない(地方自治法第250条の14第1項)。
3.誤り。
地方自治法第245条の8では、国の大臣による代執行等について定めているが、その大まかな流れは、法定受託事務について、違反等がある場合で一定の要件を満たすと、大臣は都道府県知事に勧告をすることができ(地方自治法第245条の8第1項、12項)、その勧告に係る事項を行わないときは、指示することができ(地方自治法第245条の8第2項、12項)、それでも当該事項を行わないときは、高等裁判所に対し、訴えをもって、当該事項を行うべきことを命ずる旨の裁判を請求することができる(地方自治法第245条の8第3項、12項)。
そして、判決が出ているのになお、判決内の期限までに行わないときにはじめて、大臣は当該都道府県知事に代わって当該事項を行うことができる(地方自治法第245条の8第8項、12項)。
したがって、「物件の撤去を国が求めるのは、法定受託事務ではない点」、「地方自治体の関与ではいきなり代執行はできない点」、「市長に代わって代執行できるのは都道府県知事である点」で誤りである。
4.誤り。
那覇市情報公開条例に基づき、A市長が国の建築物の建築確認文書について公開する旨の決定をし、当該決定に対して国が取消訴訟を提起した事案で、控訴審(福岡高那覇支判平成8年9月24日)は、当該訴訟は法律上の争訟に該当しないとして却下したが、上告審(最判平成13年7月13日)は、公開されると本件建物の所有者として有する固有の利益が侵害されるから法律上の争訟に当たるとした。ただし、その結論は、本公開条例は国の主張している利益を個別的利益として保護する趣旨を含まないから、原告適格はないとして不適法としている。
5.誤り。
地方自治法上において補助金交付の決定の不服に関する機関訴訟は法定されていない。
なお、国の補助金に関しては、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律でその手続き等が定められており、「不服の申出」の制度はあるが(補助金適正化法第25条)、機関訴訟については法定されていない。


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