行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成24年24問

行政総論

○:5.Y県知事は、河川改修工事などのやむをえない理由があれば、許可を撤回できるが、こうした場合でも、Xに損失が生ずれば、通常生ずべき損失を補償しなければならない。


問24

Xは、A川の河川敷においてゴルフ練習場を経営すべく、河川管理者であるY県知事に対して、河川法に基づく土地の占用許可を申請した。この占用許可についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.この占用許可は、行政法学上の「許可」であるから、Xの申請に許可を与えるか否かについて、Y県知事には、裁量の余地は認められない。

☓:2.申請が拒否された場合、Xは、不許可処分の取消訴訟と占用許可の義務付け訴訟を併合提起して争うべきであり、取消訴訟のみを単独で提起することは許されない。

☓:3.Y県知事は、占用を許可するに際して、行政手続法上、同時に理由を提示しなければならず、これが不十分な許可は、違法として取り消される。

☓:4.Xが所定の占用料を支払わない場合、Y県知事は、行政代執行法の定めによる代執行によって、その支払いを強制することができる。

○:5.Y県知事は、河川改修工事などのやむをえない理由があれば、許可を撤回できるが、こうした場合でも、Xに損失が生ずれば、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

解説

1.妥当でない。
河川の占有許可は、行政法学上の特許にあたる。
特許とは、特定人のために、新たな権利を設定し、又は法律上の地位を付与する行為のことであり、公物を占有することは、本来、国民が有している権利ではなく、新たに設定して与えるものであるから、特許に当たる。
一方、許可は、国民が本来は自由にできる行為を公益上の理由から禁止し、一定の場合にこれを解除するものである。
この「本来国民が有している権利か」、「新たに設定した権利か」といった性質の違いに由来して、伝統的に「許可」は、行政裁量が狭いないし原則的には認められないと解されているのに対し、「特許」は行政裁量が広いと解されている。
したがって、河川占有許可を「許可」としている点と「Y県知事には、裁量の余地は認められない。」としている点が誤りである。
2.妥当でない。
申請が拒否された場合に義務付け訴訟を提起する場合は、処分の取消訴訟又は無効確認訴訟のどちらかを併合提起しなければならない(行政事件訴訟法第37条の3第3項2号)。
しかし、取消訴訟を提起する場合は、単独で提起できる。
3.妥当でない。
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、客観的指標等により適合してないのが明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる(行政手続法第8条)。
したがって、占有を許可する場合は、理由提示する必要はないので、提示してなくても違法にはならない。
なお、拒否処分の理由提示は、これが唯一の手続き保障になるため、不利益処分の理由提示における差し迫った必要がある場合の省略といった例外は認められていない(行政手続法第14条1項ただし書参照)。
4.妥当でない。
代執行とは、公法上の代替的作為義務が履行されない場合に、行政庁が自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者になさしめ、その費用を義務者から徴収することである。
本肢のような国や地方公共団体が有する金銭債権について、その履行がされない場合に、その履行がされた状態を実現する強制手段は、強制徴収である。
したがって、代執行することはできない。
5.妥当である。
河川管理者は、河川工事のためやむを得ない必要があるときその他公益上やむを得ない必要があるとして許可等の取消し等の処分をした場合において、それにより損失を受けた者があるときは、原則としてその者に対して通常生ずべき損失を補償しなければならない(河川法第76条1項本文)。
なお、本肢の事案では、河川法によって損失補償を受けられるが、行政財産の使用許可を撤回した場合に、その事案の損失補償に関して直接的な規定がないときは、国有財産法を適用ないし準用した上で、以下で示されている考え方によって処理される。
行政財産の使用許可を撤回した場合の損失補償について判例は「行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。すなわち、当該行政財産に右の必要を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひっきょう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであって、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られる」としている(最判昭和49年2月5日)。


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