行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成24年30問

民法物権

○:4.集合債権の譲渡担保において、それが有効と認められるためには、契約締結時において、目的債権が特定されていなければならず、かつ、将来における目的債権の発生が確実でなければならない。


問30

譲渡担保に関する次の記述のうち、判例に照らし、誤っているものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.不動産の譲渡担保において、債権者はその実行に際して清算義務を負うが、清算金が支払われる前に目的不動産が債権者から第三者に譲渡された場合、原則として、債務者はもはや残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできず、このことは譲受人が背信的悪意者にあたるときであっても異ならない。

☓:2.集合動産の譲渡担保において、債権者が譲渡担保の設定に際して占有改定の方法により現に存する動産の占有を取得した場合、その対抗要件具備の効力は、その構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産についても及ぶ。

☓:3.集合動産の譲渡担保において、設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をしたときは、当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。

○:4.集合債権の譲渡担保において、それが有効と認められるためには、契約締結時において、目的債権が特定されていなければならず、かつ、将来における目的債権の発生が確実でなければならない。

☓:5.集合債権の譲渡担保において、当該譲渡につき譲渡人から債務者に対して確定日付のある証書によって通知が行われた場合、その対抗要件具備の効力は、将来において発生する債権についても及ぶ。

解説

譲渡担保とは?
譲渡担保とは、債権者が債権担保の目的で所有権を債務者から法律形式上譲り受け、被担保債権の弁済をもってその権利を返還する仕組みの担保方法である。
なお、民法が定める担保権を典型担保というのに対し、その定めがなく判例及び学説によって認められた担保権を非典型担保というが、譲渡担保は非典型担保の代表的なものである。
1.正しい。
不動産を目的とする譲渡担保契約において、債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には、債権者は、右譲渡担保契約がいわゆる帰属清算型であると処分清算型であるとを問わず、目的物を処分する権能を取得するから、債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは、原則として、譲受人は目的物の所有権を確定的に取得し、債務者は、清算金がある場合に債権者に対してその支払を求めることができるにとどまり、残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできなくなるものと解するのが相当である。この理は、譲渡を受けた第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合であっても異なるところはない(最判平成6年2月22日)。
2.正しい。
債権者と債務者との間に、集合物を目的とする譲渡担保権設定契約が締結され、その際に債権者が占有改定の方法により現に存する動産の占有を取得した場合、債権者は、当該集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備したことになり、その効力はその後構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について及ぶ(最判昭和62年11月10日)。
集合動産の譲渡担保とは?
集合動産の譲渡担保とは、特定された個々の動産を一個の集合物として捉えて、それに譲渡担保を設定することである。例えば、倉庫内にある機械・器具・在庫商品などを一括して譲渡担保の目的にする場合である。
その仕組上、集合動産の譲渡担保の目的物は、流動的であり、すなわち一定の範囲内で入れ替わることが前提になっている。
3.正しい。
構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保においては、集合物の内容が譲渡担保設定者の営業活動を通じて当然に変動することが予定されているのであるから、譲渡担保設定者には、その通常の営業の範囲内で、譲渡担保の目的を構成する動産を処分する権限が付与されており、この権限内でされた処分の相手方は、当該動産について、譲渡担保の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができると解するのが相当である。他方、対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該処分は上記権限に基づかないものである以上、譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないというべきである(最判平成18年7月20日)。
4.誤り。
将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約にあっては、契約当事者は、譲渡の目的とされる債権の発生の基礎を成す事情をしんしゃくし、右事情の下における債権発生の可能性の程度を考慮した上、右債権が見込みどおり発生しなかった場合に譲受人に生ずる不利益については譲渡人の契約上の責任の追及により清算することとして、契約を締結するものと見るべきであるから、右契約の締結時において右債権発生の可能性が低かったことは、右契約の効力を当然に左右するものではないと解するのが相当である(最判平11年1月29日)。
したがって、「将来における目的債権の発生が確実でなければならない」とする本肢は誤っている。
集合債権の譲渡担保とは?
集合債権の譲渡担保とは、集合動産の譲渡担保の債権版であり、すなわち特定された個々の債権を一個の集合した債権として捉えて、それに譲渡担保を設定することである。
例えば、債務者(甲)が債権者(乙)に対する金銭債務の担保として、甲の丙(第三債務者)に対する既に発生している売掛金及び2年先までの売掛金を一括して乙に譲渡し、乙が丙に対し担保権実行として取立ての通知をするまでは甲の取立てを許諾する内容の債権譲渡契約である。
5.正しい。
甲が乙に対する金銭債務の担保として甲の丙に対する既に生じた債権、及び将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡した事案において判例は、この場合、既に生じ、又は将来生ずべき債権は、甲から乙に確定的に譲渡されており、ただ、甲、乙間において、乙に帰属した債権の一部について、甲に取立権限を付与し、取り立てた金銭の乙への引渡しを要しないとの合意が付加されているものと解すべきであるから、上記債権譲渡について第三者対抗要件を具備するためには、指名債権譲渡の対抗要件(民法467条2項)の方法によることができるとしている(最判平成13年11月22日)。
また、譲渡担保の目的とされた債権が将来発生したときには、譲渡担保権者は、譲渡担保設定者の特段の行為を要することなく当然に、当該債権を担保の目的で取得することができるとしている(最判平成19年2月15日)。


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