行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成24年39問

商法会社法

○:2.ア・ウ


問39 監査役設置会社および委員会設置会社に関する次のア~オの記述のうち、いずれの会社についても、正しいものの組合せはどれか。

ア 会社を代表する代表取締役または代表執行役は、取締役会で選定しなければならない。
イ 取締役会決議により、会社の業務の執行を取締役に委任することができる。
ウ 定款の定めにより、多額の借財の決定を株主総会決議に委ねることができる。
エ 取締役会決議により、多額の借財の決定を取締役または執行役に委任することができる。
オ 取締役および社外取締役の員数の要件を満たせば、多額の借財の決定を特別取締役からなる取締役会に委譲することができる。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.ア・イ

○:2.ア・ウ

☓:3.イ・オ

☓:4.ウ・エ

☓:5.エ・オ

解説

ア.正しい。
取締役会の職務には次のものがある(会社法第362条2項)。
①取締役会設置会社の業務執行の決定
②取締役の職務の執行の監督
③代表取締役の選定及び解職
また、代表執行役は、執行役が一人のときは、その者が代表執行役に選定されたことになるが、複数いるときはその中から、取締役会が選定しなければならない(会社法第420条)。
したがって、取締役会がある場合は、会社を代表する代表取締役または代表執行役は取締役会で選定しなければならない。
補足
本問では「監査役設置会社」と「委員会設置会社」に関して問われているが、取締役会の設置義務があるのは、「公開会社」 「監査役会設置会社」「委員会設置会社」であり、「監査役設置会社」には設置義務がない(会社法第327条)。
そうすると、取締役会を設置していない監査役設置会社もあることになり、この場合は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって代表取締役を定めることができるため(会社法第349条3項)、必ずしも「会社を代表する代表取締役・・・は取締役会で選定しなければならない。」とは言えないことになる。
やや疑義の残る作りの甘い問題であるが、「取締役会が設置されていること」を暗黙の前提に問うていると理解することになろうか。
イ.誤り。
委員会設置会社の業務の執行は、執行役の職務である(会社法第418条2号)。
また、委員会設置会社の取締役の権限につき、会社法第415条は「委員会設置会社の取締役は、この法律又はこの法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、委員会設置会社の業務を執行することができない」と規定している。
したがって、委員会設置会社においては、会社の業務の執行は執行役が行い、取締役会決議によって、委員会設置会社の業務の執行を委任することができない。
ウ.正しい。
会社法第295条2項は「取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる」として、株主総会の権限を狭めている。
したがって、定款の定めがあれば、多額の借財の決定を株主総会に委任することができる。
エ.誤り。
取締役会は、法定の重要な業務執行については自身の決議で決定しなければならず、取締役に委任することができない(会社法第362条4項柱書)。
重要な業務は、取締役全員の協議により適切な意思決定がなされることが要求されるからである。
そして、その委任できない業務として「重要な財産の処分及び譲受け」「多額の借財」 「重要な使用人の選任及び解任」などが法定されている(会社法第362条4項2号)。
したがって、取締役会決議により、多額の借財の決定を取締役に委任することはできない。
なお、委員会設置会社では、機動的意思決定を可能にすることが重要な存在意義又は選択意義であるから、委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、一部のものを除いた委員会設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することが認められている(会社法第416条4項)。
オ.誤り。
取締役設置会社は、「取締役の数が6人以上」及び「1人以上の社外取締役」という2つの員数要件をいずれも満たしている場合、取締役会は「重要な財産の処分・譲受け」及び「多額の借財についての決議」については、あらかじめ選定した3人以上の取締役(特別取締役)のうち、議決に加わることができるものの過半数(取締役会で要件を加重することは可能)が出席し、その過半数(取締役会で要件を加重することは可能)をもって行うことができる旨を定めることができる(会社法第373条1項)。
しかし、この特別取締役の制度は、委員会設置会社で採用することはできない(会社法第373条1項括弧書)。
したがって、委員会設置会社以外の取締役会設置会社では、多額の借財の決定を特別取締役からなる取締役会に委譲することができるが、委員会設置会社においては、多額の借財の決定を特別取締役からなる取締役会に委譲することはできない。
 委員会設置会社で特別取締役の制度を採用してないのはなぜか?
肢エで説明のとおり、取締役会設置会社は、①「重要な財産の処分・譲受け」及び②「多額の借財についての決議」の事項について、取締役に委任することが禁止されている。
しかし、大規模な会社では、①②を取締役会が処理するとなると意見の対立等により迅速な業務執行を阻害するおそれがある。
そこで、取締役会の形骸化防止・取締役の独断専行を防止しつつ迅速な業務執行を行うために設けられたのが、特別取締役による取締役会決議の制度である。
一方、委員会設置会社では、肢エで説明のとおり、①②の事項にについて、その決定を執行役に委任することができ、当該制度を採用する必要がないため、除外されたものである。


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