行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成24年47問

一般知識

○:4.自治体議会では、審議の活性化を図るため、近年、本会議における質疑を一問一答方式に変える議会が増えており、議会基本条例を制定して、首長や執行機関の職員に、議員の質問に対して反問する権利を認める議会が現れている。


問47

わが国の議会の運営に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.かつて国会では、官僚が政府委員として大臣の代わりに答弁するなど、政治家の主体性が問われる事態が見られたため、1990年代末に、政府委員制度が廃止されるとともに、いわゆるクエスチョン・タイム制が導入されたが、この制度では、野党第一党の党首以外には与党党首(首相)との討論の機会がない。

☓:2.国会における立法については、これまでは官僚が法案を作成し、内閣提出法案として提出されることが多かったが、1990年代からは議員提出法案が増加傾向にあり、特に法案成立率では例年、内閣提出法案を上回るようになっている。

☓:3.議員が所属する政党の決定に拘束される党議拘束は、法律上、参議院の審議には及ばないと定められているにもかかわらず、実際には党議に反する行動は困難であるため、議員の自由な発言や議論を阻害する場合があることが指摘されている。

○:4.自治体議会では、審議の活性化を図るため、近年、本会議における質疑を一問一答方式に変える議会が増えており、議会基本条例を制定して、首長や執行機関の職員に、議員の質問に対して反問する権利を認める議会が現れている。

☓:5.自治体では一種の大統領制がとられ、原則として首長が予算案以外の議案を議会に提出できないことから、首長が事務執行等のため条例制定などを必要とする場合は、便宜上与党の議員を通じて提案している。

解説

1.誤り。
政府委員の制度とは、議員から政府への質問に対して、大臣に代わって(又は共に)政府委員が答弁するという制度で、旧憲法では政府委員に関する規定があり(明治憲法54条)、現憲法下でも、国会法に規定を設けて当該制度が維持されてきた。
しかし、大臣が政策を勉強しないことに繋がり、政府委員制度の存在自体が、官僚主導政治と国会における審議低調の一因であるとの声が高まり、国会審議活性化法の施行によって1999年に廃止された。
また、同法施行を機にイギリス議会におけるクエスチョンタイムをモデルにして、党首討論制が導入され、首相(与党党首)と野党各党首(衆院又は参院において10人以上の議員で構成されている院内交渉団体の資格を有する野党)による討論が行われるようになった。
したがって、「野党第一党の党首以外」にも、与党党首(首相)との討論の機会はある。
なお、イギリス議会におけるクエスチョンタイムは、首相に対し質問し、首相がそれに答弁する質疑でしかないため、日本の党首討論と質的に異なる部分も多い。
2.誤り。
1990年代中ごろから、政策担当秘書制度の導入や議員立法活性化の提言などがされたことにより、議員提出法案は若干増加の傾向がみられた。
しかし、議員立法を提案するには、衆議院では20名以上、参議院では10名以上の賛成が必要であり、さらに予算を伴う場合はそれぞれ50名、20名以上の賛成が必要という大きな壁があるため(国会法第56条)、現在も内閣提出法案が主流である。
また、議員提出法案の成立率は、依然それほど高くはなっておらず、衆法及び参法の単体で見ても50%を超えた年は数える程度しかないのに対し、閣法は、ねじれ国会の影響で若干成立率が下がっている年があるものの50%を割り込む年は見られない。
3.誤り。
党議拘束とは、議案の賛否についてあらかじめ決めた政党の方針に、党議員の議員活動が拘束されることをいう。
党議拘束は党則などの政党内部の規則によって定まるものであり、法律で定められているものではない。
また、議案によって党議拘束をかけないということはあるが、参議院の審議全般に党議拘束をかけないとしている政党はない。
参議院の党議拘束がクローズアップされた例としては、小泉内閣時に、郵政民営化法案について党議拘束により参議院でも可決する予定だったのが、造反者が出て否決されたため、解散することになった(郵政解散)。
なお、党議拘束の問題点として、議員は全国民を代表するのに政党の意向に拘束されて議員の自由な発言や議論を阻害されるのは、憲法上許されるのか、と指摘されることもあるが、通説は党議拘束は、政治的な責任の問題が生じるにすぎず、むしろ民意の反映に不可欠な存在であることなどを理由に許されると解している。
4.正しい。
従来、地方議会の審議では、一括質問、一括答弁としているところが大半であったが、質問項目が多いと返答の項目が抜けることも少なくなく、また、何の質問に対する答弁かが傍聴者にわかりにくいなどの問題点が指摘されていた。
そこで、この問題点の改善が図れる一問一答方式に変える議会が増えている。
また、平成18年に北海道栗山町が議会基本条例(地方議会の運営をどのように行うのかを定めた条例)を制定したのを皮切りに、全国的に当該条例を制定する自治体が増えており、その条例内に、首長や執行機関の職員に、議員の質問に対して反問する権利(反問権)を認める議会が現れている(横手市議会基本条例第8条など)。
5.誤り。
地方自治体は、首長を民間の選挙で直接選出する仕組みになっており、一種の大統領制が採られている。
したがって、前半は正しい。
しかし、普通地方公共団体の長の権限の一つとして地方自治法第149条は、「普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。」と定めており、この議案には条例案も含まれる。
したがって、「首長が予算案以外の議案を議会に提出できない」としている点が誤りである。
なお、常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会の設置(地方自治法第109条)など提案権が議会に専属していると解される事件については、長はその議案を提出することはできない。


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