行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成24年59問

一般知識 文章理解

○:5.たがいに見知らぬ者どうしが、見知らぬままでともに直面している問題について公共的な議論を交わす


問59 本文中の空欄に入るものとして適当なものはどれか。

「カフェ」という催しが静かに浸透してきています。「カフェ」といっても喫茶店のことではありません。「サイエンス・カフェ」とか「哲学カフェ」「アートカフェ」といった類の、少人数でおこなうディスカッションの会のことです。市民が三々五々集まり世情について自由に論議し、その議論を活字化するあのジャーナリズムの原型とも言うべきものを生んだ、英国のコーヒーハウスにちなんで、そう名づけられたとされています。
 じつはわたしも十五年ほど前から「哲学カフェ」なるものを、町なかの集会所で、あるいはお寺の一室を借りて、そしてときにじっさいに喫茶店でもやってきました。何について議論するかは、集まった顔ぶれでその場で決める。そしてテーマに即して、誰かがまずじぶんの経験を、そしてその解釈を語りだしたあとは、それを糸口に延々三時間から五時間、あれこれ話しあう。ルールは単純です。たがいに名を名乗るだけで所属も居住地もあきらかにしない、人の話は最初から最後まできちんと聴く、他人の著書や意見を引きあいに出して長々と演説をしない、この三つだけです。研究室の同僚や大学院生がそれぞれにやってきた分まで数えあわせると、もう数百回になるでしょうか。
 ある日、もっとも年配の参加者が最後にぽつりと口にした言葉が忘れられません。司会をしていた大学院生がまとめに窮しているときに、そのご老人がたまらず口をはさみました。「まとめんでいい。知りあいでもない孫のような歳の子とこんなに長く『家族とは何か』ということをまともに話しあったというだけで満足や」、と。
 よく考えてみれば、自由社会と言いながら、たがいに見ず知らずの老若男女が「他人のことが分かるというのはどういうことか?」「正しいとはどういうことか?」などについてほとんど正面から議論する経験をもたずにきた、ということじたいがヘンなのです。
 むかし、まだ大学院生のころ、学区の婦人会の人に頼まれて、数年間、読書サークルのリーダーをやったことがあります。哲学カフェでもそうなのですが、会が始まるまではお菓子を口にしながら雑談に興じていた面々が、「それじゃ始めましょうか」という一メンバーの声によって、別の水準に身を置きなおす。それは、ふだんのたがいの関係をいったん解除する合図であり、その一言で不思議なことに言論のチャンネルがぱたっと変わる。そう、口ぶりまで変わるのです。かつて武士が刀を外し、庭側にある小さな躙り口から身をかがめて入るという茶席での作法も、そのようにみずからの身柄や属性を解除する意味をもっていたのだと想像されます。
 「市民」になるというのも、そういうことではないのでしょうか。「市民」とは住民でも国民でもない。縁とかしがらみとか制度とかを超えた次元にみずからを置きなおして、ことがらに即した議論をするということ、 じぶんにいま見えている世界を他者のいまいる場所から見えている世界と照合し、それらを摺りあわせるなかで、「公論」(パブリック・オピニオン)形成への通路を見いだすこと。これは、「ニュースショー」という名でじつは「民衆感情」(ポピュラー・センチメント)をなぞっている、あるいは煽っているにすぎない報道メディアには流されない、そのようなまなざしの定点をもつことなのです。(中略)
 問題のコアにあるものについて議論するに先立ち、まずは土俵を埋めると言ったらいいのでしょうか、共通な話題を探して、そのあたりでひとしきりたがいを撫であったあとでいよいよ本題に入っていくというのが、これまでわたしたちがなじんできた対話の作法でした。いまわたしたちに必要なのは、そうではなくて、[    ]、そのような作法なのではないかと思うのです。
(鷲田清一『語りきれないこと―危機と傷みの哲学』より)

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.身柄や属性を離れて、市民であるという自覚が、たがいの世界を積極的に示すことで生まれるような議論を目指す

☓:2.共通した結論に至ることを最重要な課題として、たがいの共通性を認めあう議論を前提とする

☓:3.年齢や職業などさまざまである人々がそれぞれの立場を超えた形で行う、ナチュラルな議論を設定する

☓:4.早急に結論をまとめることはせず、市民層へ幅広く広がっていくことが期待できるような議論を試みる

○:5.たがいに見知らぬ者どうしが、見知らぬままでともに直面している問題について公共的な議論を交わす

解説

本問を解くにあたって考えなければならないことは、次の二つがある。
①空欄前の「そうではなくて」に沿った内容であること
②空欄に入る内容は、それまでに書かれている趣旨と合致していること


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