解答 行政書士試験 平成25年10問
行政総論
○:1.公立病院において行われる診療に関する法律関係は、本質上私法関係と解されるので、公立病院の診療に関する債権の消滅時効は、地方自治法の規定ではなく、民法の規定に基づいて判断される。
○:1.公立病院において行われる診療に関する法律関係は、本質上私法関係と解されるので、公立病院の診療に関する債権の消滅時効は、地方自治法の規定ではなく、民法の規定に基づいて判断される。
問10
公法と私法に関する次の記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。
選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)
○:1.公立病院において行われる診療に関する法律関係は、本質上私法関係と解されるので、公立病院の診療に関する債権の消滅時効は、地方自治法の規定ではなく、民法の規定に基づいて判断される。
☓:2.一般職の地方公務員については、その勤務関係が公法的規律に服する公法上の関係であるので、私法的規律である労働三法(労働基準法、労働組合法、労働関係調整法)はすべて適用されない。
☓:3.地方公共団体が事業者との間で締結する公害防止協定については、公法上の契約に該当すると解されるので、根拠となる条例の定めがない限り、当該協定に法的拘束力は生じない。
☓:4.公営住宅の使用関係については、原則として公法関係と解されるので、法令に特別の定めがない限り、民法の規定は適用されない。
☓:5.国の金銭債権は、私法上のものであっても、その消滅時効については、法令に特別の定めがない限り、すべて会計法の規定に基づいて判断される。
解説
1.正しい。
「公立病院において行われる診療は、私立病院において行われる診療と本質的な差異はなく、その診療に関する法律関係は本質上私法関係というべきであるから、公立病院の診療に関する債権の消滅時効期間は、地方自治法236条1項所定の5年ではなく、民法170条1号により3年と解すべきである。」(最判平成17年11月21日)
2.誤り。
地方公務員の一般職の勤務関係について裁判例(名古屋高判昭和55年5月1日)は、公法上の関係であるとしているが、「労働三法はすべて適用されない」とするのは誤りである。
労働組合法及び労働関係調整法は、原則として適用されないが、労働基準法は一部の規定を除いて原則として適用がある(地方公務員法第58条)。
なお、国家公務員の場合は、労働三法は適用されない。
3.誤り。
公害防止協定の法的性質・効力については、議論のあるところであり、大きく分けると紳士協定説と契約説がある。
紳士協定説は、企業責任として紳士的・道義的に宣言したに過ぎないから法的拘束力はないとするのに対し、契約説は、契約である以上、根拠法令があるかどうかにかわらず一定の拘束力があるとする。
この点、判例(最判平成21年7月10日)は、法的性質等への言及はしていないが、当該協定に一定の拘束力があることを前提として、産業廃棄物処理施設を操業の差止めを認めていることから、契約説の立場であると考えられている。
したがって、「根拠となる条例の定めがない限り、当該協定に法的拘束力は生じない。」とはいえない。
4.誤り。
「公営住宅の使用関係には、公の営造物の利用関係として公法的な一面があることは否定しえない・・・中略・・・他方、入居者が右使用許可を受けて事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、前示のような法及び条例による規制はあっても、事業主体と入居者との間の法律関係は、基本的には私人間の家屋賃貸借関係と異なるところはなく、このことは、法が賃貸、家賃等私法上の賃貸借関係に通常用いられる用語を使用して公営住宅の使用関係を律していることからも明らかであるといわなければならない。したがって、公営住宅の使用関係については、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法(借地借家法)に優先して適用されるが、法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法(借地借家法)の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があるものと解すべきである。」(最判昭和59年12月13日)
5.誤り。
普通財産(国有財産のうち公の目的に供されていないもの)の売払代金債権については、私法上の金銭債権であるため、会計法第30条に規定する5年の消滅時効期間は適用されず、民法167条により10年である(最判昭和41年11月1日)。
したがって、国の金銭債権であっても、私法上のものの消滅時効は、原則として私法が適用される。
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