行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成25年22問

地方自治法

○:5.長の定める規則に罰金を科する旨の規定を置くことは認められていないことから、本条例にかえて長の規則で違反者に罰金を科することは許されない。


問22

A市においては、地域の生活環境の整備を図るために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者には最高20万円の罰金もしくは最高5万円の過料のいずれかを科することを定めた条例を制定した。この場合における次の記述のうち、正しいものはどれか。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.違反者に科される過料は、行政上の義務履行確保のための執行罰に当たるものであり、義務が履行されるまで複数回科すことができる。

☓:2.本条例に基づく罰金は、行政刑罰に当たるものであり、非訟事件手続法の定めに基づき裁判所がこれを科する。

☓:3.条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、たとえA市域内の繁華街で路上喫煙に及んだとしても、本条例に基づき処罰することはできない。

☓:4.条例に懲役刑を科する旨の規定を置くことは許されていないことから、仮に本条例が違反者に対して懲役を科するものであれば、違法無効になる。

○:5.長の定める規則に罰金を科する旨の規定を置くことは認められていないことから、本条例にかえて長の規則で違反者に罰金を科することは許されない。

解説

1.誤り。
軽微な行政上の義務違反行為に対する制裁として科す過料は、秩序罰に当たる(執行罰ではない)。
秩序罰は、刑罰ではないので、二重処罰の禁止(憲法第39条)が厳格に当てはまるわけではないが、制裁である以上は、同一規定で同一行為を繰り返し罰するのは、判例(最判昭和39年6月5日)が「目的、要件及び実現の手続」を異にすることを理由に行政刑罰と秩序罰の併科を認めている点と相反するので、問題が生じる。
なお、執行罰は、行政上の義務履行確保のために科す過料等のことであり、この場合は、制裁ではなく、あくまで間接強制という強制執行の方法であるから、義務の履行がなされるまでは何度でも科すことができるが、条例で定めることはできないと解されている(行政代執行法第1条)。
2.誤り。
本条例に基づく罰金は、行政刑罰に当たるという点は正しい。
しかし、行政刑罰には、刑法総則の適用があるため、その手続は、行政庁等の告発を受けて、検察官が起訴し、裁判所が刑事訴訟法の定める手続によって科すことになる。
したがって、非訟事件手続法の定めに基づいて科すわけではない。
なお、秩序罰による過料の場合は、刑罰ではないため、刑法総則及び刑事訴訟法の適用はうけず、法令に別段の定めがある場合を除き、法律に根拠がある過料の場合は地方裁判所が非訟事件手続法の定めに従って科すことになり、本問のように条例に根拠がある過料の場合には、地方自治法に基づいて地方自治体の長が行政処分によって科すことになる。
3.誤り。
条例の効力は属地的なものであるので、たとえA市の住民以外の者であっても、A市域内の繁華街で路上喫煙に及んだ場合、本条例に基づき処罰することができる。
「条例を制定する権能もその効力も、法律の認める範囲を越えることを得ないとともに、法律の範囲内に在るかぎり原則としてその効力は当然属地的に生ずるものと解すべきである。それゆえ本件条例は、新潟県の地域内においては、この地域に来れる何人に対してもその効力を及ぼすものといわなければならない。」(最判昭和29年11月24日)
4.誤り。
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる(地方自治法第14条3項)。
したがって、本条例で違反者に対して懲役を科したとしても、2年以下であれば、違法無効にはならない。
5.正しい。
普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができるだけで(地方自治法第15条2項)、罰金(刑罰の一種)を科する旨の規定を設けることはできない。
したがって、本条例にかえて長の規則で違反者に罰金を科することは許されない。


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