行政書士過去問ドリル

解答 行政書士試験 平成25年27問

民法総則

○:5.エ・オ


問27 錯誤による意思表示に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア 法律行為の要素に関する錯誤というためには、一般取引の通念にかかわりなく、当該表意者のみにとって、法律行為の主要部分につき錯誤がなければ当該意思表示をしなかったであろうということが認められれば足りる。
イ 法律行為の相手方の誤認(人違い)の錯誤については、売買においては法律行為の要素の錯誤となるが、賃貸借や委任においては法律行為の要素の錯誤とはならない。
ウ 動機の錯誤については、表意者が相手方にその動機を意思表示の内容に加えるものとして明示的に表示したときは法律行為の要素の錯誤となるが、動機が黙示的に表示されるにとどまるときは法律行為の要素の錯誤となることはない。
エ 表意者が錯誤による意思表示の無効を主張しないときは、相手方または第三者は無効の主張をすることはできないが、第三者が表意者に対する債権を保全する必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めたときは、第三者たる債権者は債務者たる表意者の意思表示の錯誤による無効を主張することができる。
オ 表意者が錯誤に陥ったことについて重大な過失があったときは、表意者は、自ら意思表示の無効を主張することができない。この場合には、相手方が、表意者に重大な過失があったことについて主張・立証しなければならない。

選択肢(解答ページでは、出題時の順番に戻ります)

☓:1.ア・イ

☓:2.ア・ウ

☓:3.イ・エ

☓:4.ウ・オ

○:5.エ・オ

解説

ア.妥当でない。
民法第95条に規定する、法律行為の要素に関する錯誤といえるためには、「因果関係」と「重要性」が要求される(大判大正7年10月3日)。
ここで、「重要性」とは、錯誤がなければ意思表示をしなかったであろうということが、通常人の基準からいっても(一般取引の観念に照らして)もっともであるほどの、重要な部分についての錯誤をいう。
したがって、本肢の「一般取引の観念にかかわりなく当該当事者のみにとって法律行為の主要部分につき錯誤がなければ当該意思表示をしなかったであろうということが認められれば足りる」という部分は妥当ではない。
なお、ここでいう「因果関係」とは、その錯誤がなければ表意者は意思表示をしなかったであろうということである。
イ.妥当でない。
人違いは、現実売買においては要素の錯誤とならないが、人格的信頼関係の色彩の強い賃貸借、委任、贈与、信頼売買等では、要素の錯誤に必要な「因果関係」及び「重要性」の要件(肢ア参照)を満たしていることになるので、要素の錯誤となる(大判明治40年2月25日)。
したがって、「賃貸借や委任については法律行為の要素の錯誤とはならない」とする記述は妥当でない。
ウ.妥当でない。
動機の錯誤においては、表意者がその動機を意思表示に加えるものとして明示的に表示した場合に限らず、動機が黙示的に表示されるにとどまるときも法律行為の要素の錯誤となることがある(大判大正3年12月15日、最判平成元年9月14日)。
したがって、「動機が黙示的に表示されるにとどまるときは法律行為の要素の錯誤となることはない」とする記述は妥当でない。
エ.妥当である。
錯誤無効(民法第95条)の制度趣旨は、表意者の保護にあるから、相手方も第三者も表意者の意思に反して無効を主張することができない(最判昭和40年9月10日)。
しかし、第三者については、第三者が表意者に対する債権を保全するため必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めたときは、表意者自らは当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、第三者たる債権者は債務者たる表意者の意思表示の錯誤による無効を主張できるとするのが判例である(最判昭和45年3月26日)。
オ.妥当である。
表意者が錯誤に陥ったことについて重大な過失があったときは、表意者は、自ら意思表示の無効を主張することができない(民法第95条ただし書)。
この場合の「重大な過失」の主張・立証責任は、相手側が負うとするのが判例である(大判大正7年12月3日)。
なお、相手方が錯誤について悪意であった場合には、相手方を保護する必要性がないから、民法95条ただし書は適用されず、重過失があっても錯誤無効を主張することができる(東京高判昭和45年1月30日、)。


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